孫への生前贈与は特別受益か | 神戸相続弁護士 福田法律事務所

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孫への生前贈与は特別受益か

このページでは、子ではなく孫に対して生前贈与した場合、それは相続人である子に対する特別受益になるかどうかについて、解説します。

孫への生前贈与は特別受益になるのか?

子への生前贈与は、相続対策によく利用されます。贈与税が非課税の範囲で少しずつ生前贈与をし、将来の相続発生時の遺産を減らしておけば、相続税を圧縮し節税することができるからです。

しかし、子は自分の相続人ですから、子に対して生前贈与をすると、それが相続時に特別受益とみなされ、遺産分割協議のときに紛争になる可能性があります。

では、子ではなく子の子、つまり孫に対して生前贈与した場合はどうでしょうか?子は自分の相続人ですが、孫は(子が相続時に存命する限り)自分の相続人ではありませんから、特別受益にならないように思えます。

結論から言えば、孫への生前贈与は基本的に特別受益にはなりません。

理由としては、特別受益を定める民法903条1項は受益者を「共同相続人中」と限定しており、相続人以外の者が受ける受益を特別受益とはみていないからです。

しかし、例外的に特別受益に当てはまるケースもあります。

孫が養子になっている

養子は相続人になりますから、孫を養子にすることによって、孫は相続人になります。

したがって、孫が養子となってから生前贈与を行った場合は、特別受益になる可能性が出てきます。ただし、どのような種類の贈与であっても特別受益になるわけではありません。

特別受益は、「生計の資本」として受けた贈与に限られます
(他にも「婚姻・養子縁組のため」の贈与という類型の特別受益もありますが、今回は孫への生前贈与を想定しているため説明は割愛します。)

祖父母が孫を養子にするのであれば、扶養義務が発生します。

その結果、生活費や教育費は「生計の資本」として交付した財産ではなく、扶養義務の履行と評価され、特別受益とは考えにくくなります。

他方、扶養義務を超える金銭の贈与は、特別受益とみなされることになるでしょう。

つまり、孫が養子となっており、かつ「生計の資本」として生前贈与を行っていたのであれば、特別受益に含めることになるのです。

子が孫の扶養義務を怠った

子(孫の親)が扶養義務を怠った場合、孫への生前贈与が特別受益になることがあります。

例えば、孫の親である子が失踪するなどして自らの子(被相続人から見た孫)の扶養義務を怠り、祖父母が孫を扶養することになった場合は、生前贈与が子に対する特別受益となることはありえます。

本来、孫を扶養するのはその親である自分の子の義務ですから、自分の子に代わって孫を扶養したのであれば、それは孫の扶養にかかる金銭を子に与えたと同様にみなせるからです。

ただし、孫を養子にした場合と同様に、扶養義務の範囲内での贈与は、特別受益にならないと考えるのが一般的です。

孫名義での生前贈与だが実質は子への贈与である

孫に対して生前贈与を行っていたとしても、実質的に子(孫の親)への贈与であると評価される事情があれば、特別受益になることがあります。これは、先ほどの孫を扶養した場合と同じです。

例えば、孫に大学の入学金を贈与するとして、入学金の納入義務が保護者である子(孫の親)にあった場合には、その贈与は実質的には孫ではなく子への贈与と評価されることが多いでしょう。

特別受益の持戻しの免除とは?

孫への生前贈与が特別受益になる場合、遺産分割の具体的相続分の計算において、特別受益を受けた分だけ相続分を減額し調整することになります(民法903条1項)。

簡単に言えば、生前贈与を特別受益としてもらっていたら、遺産分割の際にもらえる分は減る、ということです。
これを「特別受益の持戻し」といいます。

しかし、贈与を受けた分が特別受益であっても、亡くなった人が特別受益の「持戻しの免除」の意思を表示していた場合は、特別受益があったとしても具体的相続分の計算には含めません(民法903条3項)。

つまり、孫への生前贈与が特別受益となっても、持戻し免除の意思表示があれば、遺産分割において調整する必要がなくなるのです。

例えば「○年○月に孫の入学金を肩代わりして出した○○万円については、相続において子(孫の親)の持戻しを免除する」といったような内容です。

特別受益の持戻し免除の意思表示をする方法

持戻し免除の意思表示をする方法は、口頭でもよいとされています。
しかし、特別受益に対して持戻し免除の意思表示があったかなかったかは、特別受益のある相続においてしばしば争いになります。

ですので紛争を未然に防ぐ意味では、孫に対する贈与契約書を作成する際、この贈与分に関しては子(孫の親)の特別受益の持戻しを免除する、という一文を入れておくことが望まれます。

あるいは、遺言書に「○年○月○日の●●万円の贈与については持戻しを免除する」という趣旨の内容を入れておくことで、持戻し免除の意思表示を明確にしておくことも考えられます。

持戻し免除については、こうすることで相続後のトラブルを最小限に抑えることができるでしょう。

持戻し免除の意思表示は遺留分侵害額請求には影響しない

特別受益となる生前贈与によって、のちの相続において他の相続人の遺留分を侵害することになる場合があります。子が複数いるのに、1人の子の子(孫)に遺産の全部を生前贈与してしまったような場合です。

先ほど、持戻し免除の意思表示がある生前贈与は具体的相続分の算定には影響しないと言いましたが、同じように持戻し免除の意思表示があれば遺留分の算定においても生前贈与は無視できるのでしょうか。

これに関しては最高裁の判例があり、特別受益に対する持戻し免除の意思表示は、遺留分侵害の限度で持戻し免除の意思表示が効力を失うと述べています(最高裁平成24年1月26日決定)

ですので、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性がある生前贈与に関しては、たとえ持戻し免除の意思表示をするとしても、紛争を防ぐ観点からは慎重であるべきです。

もし、孫への生前贈与が特別受益になるかどうかで困っている場合には、まずは一度、遺産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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