



「相続財産」と聞いて、思いがけない臨時収入が入ってくるというイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。しかし相続財産には預貯金や有価証券だけではなく借金などが含まれていることをご存じでしたか?ここでは相続財産にはどのようなものが含まれるのかについて解説し、相続の承認や放棄についてお伝えしていきます。
目次
相続財産とは、亡くなった人が所有していたすべての財産や権利のことを指します。ここにはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
相続財産の中でもプラスの財産となるものには、
・預貯金
・現金
・株式等の有価証券
・土地
・建物
・自動車
などがあります。
マイナスの財産の代表例は借金です。相続人には相続放棄をする権利があるので、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多い場合は、相続放棄をするかどうか検討する必要があります。
他にマイナスの財産として考えられる例は、亡くなった人が大家をしていて賃貸物件を所有していたような場合の「敷金返還債務」があります。
賃借人から預かっている敷金は賃貸借契約の担保としての役割があるため、賃貸借契約が終了したときに債務を差し引いた残額を賃借人に返還する義務が発生します。
被相続人が賃貸物件を所有していた場合、敷金返還債務の他にも、賃借物を使用収益させる義務(民法第601条)や修繕義務(民法第601条)などを相続人が引き継ぐこととなります。
しかし、亡くなった人でなければ果たすことができない権利や義務(たとえば扶養請求権や生活保護受給権など。)は、相続対象外となります(民法第896条)。
マイナスの財産のところでもお伝えしましたが、借金が多い場合に相続財産を無条件で相続することは相続人にとって負担になります。そのため、民法では、相続人に相続を承認するのか放棄するのか選択する権利を定めており、相続人は、①単純承認、②限定承認、③相続放棄の中からどれかを選択することができます。
単純承認とは、すべての相続財産を相続することをいいます(民法第920条)。単純承認の意思表示をしなかったとしても、
・相続財産の一部を使った
・限定承認や相続放棄をしないまま相続開始のとき(一般的には被相続人の死亡日)から3か月が経過した
といった事実があれば単純承認をしたものとしてみなされます。
限定承認とは、プラスの相続財産の金額を上限としてマイナスの財産も相続することをいいます(民法第922条)。たとえば5,000万円の借金と2,500万円の土地があった場合、これを限定承認すると2500万円の範囲でのみ借金を返済すればよいということになります。
相続財産のすべての権利や義務を放棄することをいいます(民法第915条)。原則として相続開始があったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述しなければ相続を放棄することはできません(民法第938条)。
相続財産や相続方法について分からないことがあれば、相続問題に強い専門家へ早めに相談するようにしましょう。
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このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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