遺言書でできること
自分が亡くなった後のことを後世に託す手段として、「遺言書」の作成があります。遺言書は、正式なものであれば様々な効力を発生させられます。実は、身分に関することやお金に関することだけでなく、もう少し身近でアバウトなことも遺言書に残せるのです。
遺言書でできる基本的なこと
遺言書は主に、「身分に関すること」「相続に関すること」「財産の使い方に関すること」「その他」の4項目について記載することができます。それぞれをもう少し詳しく見ていくと、以下のようになります。
身分に関すること
内縁関係にあった相手や、愛人・妾と呼ばれるような相手との間にもうけた子供を「非嫡出子」といいます。非嫡出子との間には法律的な親子関係がありませんが、遺言書によって親子関係を生じさせることが可能です。つまり「認知」するわけですね。
親子関係が生じるため、認知された側は相続人となります。
また、親権者がいない未成年者の後見人なども指定できます。
相続に関すること
相続に関することでは、以下の7つのことが可能です。
1. 遺産の分割方法を指定する(もしくは分割方法の指定を誰かに任せる)
自分の財産をどのように分割するかを指定できます。また、分割方法を指定する人を決めることもできます。
2. 相続人になるであろう人物から相続権を奪う・もしくは与える
自分に対して虐待や侮辱、非行などを働いた人物が推定相続人に含まれる場合は、その人物から相続権を奪う(廃除する)ことができます。
また、逆に生前に廃除した相続人に対して相続権を戻すこと(廃除の取消)も可能です。
3. 法定相続分以外の財産を指定できる(もしくは指定する人を決める)
相続人は法律によって決められた取り分に従って相続を行いますが、それ以外の分について遺言書で指定ができます。
また、これを指定する人を決めておくこともできます。
4. 5年の間遺産の分割を禁止する
5. 相続人同士の担保責任の指定
取得した相続財産に欠陥があるとき、相続人同士の間で価値の減額分を補い合うことです。担保責任についても、誰がどれだけ責任を負うかを決められます。
6. 生前贈与(特別受益)の持戻の免除
生前贈与を行うと「特別受益」としてカウントされ、実際に相続が開始するときは相続財産の中に含まれることになります。しかし、遺言書で特別受益の持ち戻しを免除することができます。これにより、生前贈与は遺産分割手続において何ら反映されなくなります。
7. 遺留分減殺方法の指定
財産の使い方に関すること
次に財産の使い方に関することです。
具体的には、「遺贈」・「寄付行為」・「信託の設定」をすることができます。
例えば、自分の財産を他人に提供したり、財団法人を設立するために寄付したり、誰かに託したりするとき、その具体的な方法を指定できます。
その他
これまで述べた内容に加え、「遺言執行者の指定」や「供養や墓守をする人の指定」「生命保険金の受取人の指定」なども可能です。また、「兄弟姉妹、全員くれぐれも仲良くするように」「残された妻の面倒をしっかり見て欲しい」といった内容も「付言事項」として記載できます。
付言事項については法的な拘束力が発生しないものの、比較的自由に書くことができます。
さらに「なぜこのような遺産配分にしたか」「なぜ相続権を取り上げたか(廃除したか)」といった理由も「宣誓供述書」という公的な文書として残せます。この宣誓供述書は、遺言書とセットで訴訟時の証拠として使われるため、作成を検討しても良いでしょう。
遺言書は自由!しかしできることは限定される
このように、遺言書では様々な効果を発生させられますが、裏を返せば「書いたものが全て認められるわけではない」ということにもつながります。今回紹介した事以外は、法的な効力を持たない可能性があることを覚えておきましょう。
どうしても後世に伝えたいことがある場合は、できるだけ法的な効力が発生するように工夫すべきです。法律の専門家の力を借りながら、後世に憂いを残さない遺言書の作成を心がけましょう。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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