



あなたは生前整理という言葉をきいたことがありますか。生前整理とは、一般的にあなた亡くなる前に、自分の身の回りのものを整理することをいいます。
あなたは、自分が亡くなったあと、身の周りのものがどうなるかを想像したことがあるでしょうか?
法律的には、あなたがもっているすべての物や財産は、あなたが亡くなった時に、相続財産として、相続人に引き継がれます。
生前整理といえば、家の中の掃除のように、身の回りにある物を処分することを思い浮かべる方が多いようです。たしかに、身の周りのすべての物が相続人の所有となってしまうことを思うと、いらないものはきちんと処分しておくべきということがお分かりいただけるでしょう。
目に見える家の中にある物の整理だけが生前整理ではありません。不動産や、預金などの重要な財産も相続人に引継がれます。それらを間違いなく、そしてできるだけ自分の死後に相続人が困ったり揉めたりしないように整理していくことが大切です。
それでは、重要な財産の生前整理は具体的にはどうすればいいのでしょう。
たとえ価値の高い財産でも、相続人にとって明らかに不必要なものや処分に困るものは、きっちり処分する、あるいは処分の段取りをつけておくことが必要です。
次に、大きな財産については、リスト化しておくことで、相続財産として何が残っているかを調べる手間をできるかぎり少なくしておくことが望ましいです。後になって他にも財産が出てきたとなれば、遺産分割のやり直しをしなければならないこともあり、相続人間のトラブルの原因となるでしょう。
この時に注意すべき点は、有価証券、株なども相続財産となることです。また生命保険などは誰が受取人となっているかで、相続財産となるかが変わるため注意が必要です。また、今あげたようなプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も相続財産となります。これも忘れずにリストにあげるようにして下さい。
民法では法定相続分といって、各相続人に相続割合が決められています。例えば配偶者と子供2名が相続人であった場合、配偶者は2分の1、子供はそれぞれ4分の1ずつとなります。これをベースに、相続人間で遺産の分け方を話し合うのが遺産分割協議です。
もっとも、財産をリストアップするうちに、この財産は誰にあげよう、などの考えを持つに至るかもしれません。
そのような場合には遺言書を作成してどの財産を誰に相続させるのかを指定しておくと自分の希望がかなえられます。また、相続人以外の人に財産を残したいと考える人もいるでしょう。そのような場合も、遺言書に残しておけば遺贈をすることができます。
いずれにしても、あとで相続人がもめることのないようきちんとした遺言書を作成することが大切になります。
以上のような段取りで自分の財産を整理していくことが大切ですが、相続には考慮すべきたくさんの要素があります。
生前に贈与する場合に贈与税はどうなるのか、相続のときの相続税はどうなるのか、税金が気になる方は、税理士に相談することをお勧めします。
また、相続や遺言書の作成については、法律の専門家である弁護士に相談することが重要です。
たとえば、相続人の誰かに全財産を譲ることはできるのか、妻の亡き後にずっと支えてくれた内縁の妻に全財産を譲ることはできるのか、相続人のうちの誰かに相続をさせないことはできるのか、相続人のひとりが行方不明の場合はどうなるのか・・・など、それぞれの事情に応じた問題は専門家に相談して、適切に対処することが必要となるのです。
生前整理をすることで、残された家族に法的なトラブルを残さないようにすることが、生前整理をするメリットといえるでしょう。
生前対策に関する記事一覧はこちら
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
成年後見人になれるのは、どのような人なのでしょうか。この記事では、生活保護を受けている人は成年後見人になれるのかなど、成年後見人になれる人の条件について解説します。 生活保護受給者でも成年後見人になれるのか 成年後見人とは、判断能力が低下した本人に代わり、財産の管理や契約の締結などを行う人のことをいいます。 最終的に後見人として認めてもらえるか...
詳しく見る後見制度は、今後の高齢化社会を見越して平成12年に導入された比較的新しい制度です。ご本人の状態によって、成年後見・保佐、補助の3種類があります。 高齢または障害によってご本人様の判断能力が弱った場合、ご本人様にとって何が最も適切かを考え、意思決定を支援するのが成年後見人(または保佐人・補助人)の役割です。 具体的には、施設入所を含めた介護サービスの選...
詳しく見る