



新型コロナウイルスは、持病を持つ人や高齢者が重症化しやすく、実際に死亡率も高くなる傾向にあります。
そのため、自身が感染したとき、万が一に備えて遺言書を作成しようとする人が増えているようです。
遺言書は形式が難しく、いざ書き始めようとしてもどんなことを書けばいいのかわからなくて、結局書かずに終わってしまう人もいるでしょう。
しかし、いつ感染してもおかしくないからこそ、遺言書を作成しておけばいざという時に備えられます。
遺言書は自分の思いを家族に伝えるだけでなく、相続争いを防ぐのにも役に立ちます。
ここでは、コロナが蔓延する今だからこそ見直したい、遺言対策についてご紹介します。
目次
遺言は、遺言者自ら自筆する「自筆証書遺言」と公証人が立会いの下作成する「公正証書遺言」の2種類があります。
他にも「秘密証書遺言」もありますが、極めて稀なケースでしか使われないため、ここでは自筆証書遺言と公正証書遺言について説明します。
自筆証書遺言は氏名、日付、押印、全文を遺言者自身が手書きで書き残すので費用が掛からず、いつでも、だれでも作成が可能です。
手軽に作成できる点が最大のメリットですが、次のようなデメリットもあります。
自筆証書遺言を発見した場合、開封前に裁判所による「検認」の手続きが必要です。
有効な遺言書として裁判所に認められた後、遺産分割協議が開始できます。
公正証書遺言は公証人2人以上が立会いのもとに遺言書を作成する方法です。
費用と時間はかかりますが、遺言書は公証役場で保管するので紛失や偽造の心配はなく、裁判所による検認も不要となります。
実際に公正証書遺言を作成するときは、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がそれを筆記します。
それを遺言者および証人に読み聞かせまたは閲覧させ、内容が正確であることを確認できたら、遺言者と証人の署名、押印することで成立します。
公正証書遺言は遺言内容に不備や記載漏れがないように遺言書を作成できるので、相続人同士のトラブルが起こるリスクも小さくなります。
より正確に、確実な遺言書を残したい場合は、公正証書遺言を残すと良いでしょう。
上記の方法は「普通方式遺言」と呼ばれ、遺言を作成するのに時間的な余裕がある人ができる遺言方法です。
しかし、新型コロナは突然症状が悪化し、重症化してしまうことがあります。
場合によっては症状悪化後すぐに入院してしまい、遺言書を作成できる状態ではなくなるというケースも考えられます。
そこで、通常の遺言方式では遺言を残せないケースにおいて利用される「特別方式遺言」によって遺言を残すことができます。
普通方式で遺言を残せない事情がある場合、次のような方法で遺言を残すことが法律上認められています。
遺言者死亡の危機が迫っているときに、遺言者が口頭で遺言を残す方法です。
遺言を残す方法は公正証書遺言と似ていて、証人3名以上が立会いの下、遺言者が口述した遺言を承認が筆記し、他の証人と遺言者に読み上げまたは閲覧させた後に全員の署名、押印によって遺言が成立します。
ただ、死亡危急時遺言は他人が書面に残すという意味では、簡単に偽造が可能な方法でもあります。
遺言者の遺志が反映された遺言であるかどうかを判断するために、遺言があった日から20日以内に家庭裁判所で確認の手続きが必要となります。
遺言者が伝染病のため行政処分によって交通を絶たれた場所にいる場合、警察官一人及び証人一人以上の立ち合いを持って遺言書を作成できます。
警察官1人と証人1人以上の立ち合いのもと、遺言者が遺言書を作成し、遺言者、警察官、証人が署名、押印することで成立します。
あくまで伝染病により隔離されていることが条件のため、死亡危急時遺言のように生命の危機が迫っている必要はありません。
また、遺言執行時には自筆証書遺言と同様、検認が必要となります。
伝染病隔離者遺言を作成後、隔離状態が終了し遺言者が普通方式の遺言を残せるようになってから6か月間経過した場合、伝染病隔離者遺言は無効になります。
新型コロナウイルスが全国に感染拡大した今、いつ、だれが感染しておかしくありません。
万が一自分が感染したときのために遺言書を残したいと思うのも当然です。
遺言対策についてより詳しく知りたい方や、遺言の作成に不安があるという方は相続に詳しい弁護士にご相談ください。
弁護士によるアドバイスをもとに、ご自分に合った遺言方法を選ぶことをおすすめします。
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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