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認知症の方の遺言はこうする

認知症の方の遺言はこうする
認知症を発症した高齢者は、遺言書を作成することはできないのでしょうか?認知症だからと言ってただちに遺言ができないということはなく、認知症の人に合った方法で遺言することは可能です。ただし、遺言として法律的に有効かどうかを争う可能性がある点にも注意が必要です。ここでは、認知症の人が遺言書を作成する方法と、認知症の人が作成した遺言書をめぐる裁判例をご紹介します。
 

遺言書を作成できる人とは

遺言書が作成できる人を、民法では次のように定めています。

  • ①15歳に達した者(民法961条)
  • ②遺言能力がある者(民法963条)

上記の要件を満たす人ならいつでも、だれでも作成できます。「15歳に達した者」は、年齢ではっきりと決まっていますが、「遺言能力」はどの程度の判断能力があれば「遺言能力がある者」とされるのかが問題となります。特に認知症を発症している方が、遺言作成当時に遺言能力があったかどうかを争うケースが少なくありません。

 

認知症の程度を確認する方法

認知症の診断指標として「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」(以下「HDS-R」)があります。これは認知症の疑いがある方にいくつかの質問をして、その点数によって大まかな認知機能障害の程度を把握することを目的として作成されたものです。

HDS-Rは30点満点で、20点以下は認知症の疑いが高いとされています。ただ、点数のみで画一的に認知症の程度が判断されるものではありません。HDS-Rの結果が4点だった人の遺言が有効だったとする判例もあるからです(京都地裁平成13年10月10日)。

遺言者が自己の財産を認識し、自身が遺言する内容とそれによって起こる結果をどれほど理解できているかが重要なので、20点以下だからといって遺言をあきらめてはいけません。

 

認知症の方が遺言する方法

遺言書は、たとえ認知症を発症していても本人が作成しなければなりません。成年後見人、補助人といった認知症の人の財産を管理する人による代筆も認めらず、本人以外が作成した遺言書は無効になります。

特に認知症の方は、自筆による遺言が難しいことが多いため、たいていの場合は公正証書遺言を選ぶ傾向にあります。自筆証書遺言は文案を自身で考えたり、すべてに財産を把握したりして、認知症の人が作成するにはハードルが高いためです。公正証書遺言は遺言者が公証役場に行き、公証人と証人2人が立会いのもと、遺言内容を口授し、公証役場の職員がそれを筆記、読み上げ、証人2人の確認を経て作成されるので、自筆証書遺言より信頼性が高いと言えます。

また、作成前に弁護士などの法律の専門家と事前に打ち合わせを行い、文案を作成して当日に備えます。そして、遺言作成に慣れている公証役場の職員が作成するので、法律上の要件を満たさないために無効となることはまずありません。

 

公正証書遺言が無効になるケース

ただ、法律上の要件は満たしていても作成当時の遺言者の認知能力をめぐって遺言無効の訴えは起きています。そのため、たとえ公正証書遺言でも認知症の人の遺言は100%確実なものとは言えないのが現実です。

例えば、遺言者が公証人の質問に対し、言語を持って陳述できず、肯定又は否定の挙動しかなかったときは口授がなかったものとされ、無効となりました(最判昭和51年1月16日)。また、アルツハイマー型認知症を発症していた遺言者の遺言内容が複雑だったケースでは、遺言作成の際の受け答えが「はい」「その通りです」といった簡単な肯定の返事にとどまったため、遺言能力を有していたとはいえず、無効になった事例もあります(横浜地裁平成18年9月15日)。

このように、口授の有効性を争う裁判例もあるため、場合によっては口授が不要な自筆証書遺言が有効になる場面もあります。認知症の症状にあった遺言方式はどちらになるのか、気になる方は相続に詳しい弁護士にお気軽にご相談ください。

 

遺言能力がわかる資料を保管すること

このようにたとえ公正証書遺言でも、認知症の方の遺言は無効だと訴える相続人がいる可能性もあります。その場合に備えて、遺言者の遺言能力ならびにコミュニケーション能力がわかるような資料をあらかじめ準備しておくとよいでしょう。

例えば、遺言者と受け答えしている様子がわかる動画や、家族が見た遺言者の日々の記録なども証拠になります。他にも、医師の診断書、カルテ、介護記録といった第三者による記録や証言も有力な証拠になります。このように、他の相続人に遺言無効を主張されたときに反論できそうな資料はすべて保管しておきましょう。

また、遺言作成時に当日の受け答えがわかるように公証人の了承を得たうえで録音・録画しておくことも有用でしょう。
 

認知症の人の遺言作成なら弁護士にご相談ください

認知症の人の遺言者の遺言能力を判断するのは極めて困難なため、遺言をする前に弁護士に相談しましょう。遺言作成に詳しい弁護士が、個別の事情を考慮したうえで、適切な遺言作成をサポートさせていただきます。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 弁護士法人紫苑法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。弁護士法人紫苑法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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