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遺言を見つけたが相続人に公開しなかった場合のペナルティとは?

故人が自宅に保管していた遺言書を相続人が見つけ、それが自分にとって不利な内容だったときはどうすればいいでしょう。

遺言書がなくても遺産分割協議自体はできます。しかし、故人の希望が書かれた遺言書を隠匿し、公開しなかった場合は重いペナルティを負わなければなりません。ここでは、遺言書を相続人に公開しなかった場合のペナルティと、自分に不利な内容の遺言書を見つけたときの対処法についてご紹介します。

 

遺言書を公開しなければ相続欠格になる

遺言書を公開せず隠匿した場合、相続欠格に該当し相続権を失います。つまり、全く相続ができなくなるということです。法律上、次の要件のいずれかに該当する人は相続欠格となります。

  • ①被相続人または優先相続人を殺害または殺害しようとして刑に処せられた者
  • ②被相続人が殺害されたのを知って告発・告訴しなかった者(是非弁別能力を欠く場合、殺害者が配偶者・直系血族である場合を除く)
  • ③詐欺・強迫により遺言を妨げた、撤回・取消・変更を妨げた者
  • ④詐欺・強迫により遺言をさせた、撤回・取消・変更を妨げた者
  • ⑤遺言を偽造、変造、破棄、隠匿した者

遺言書を見つけたにもかかわらず、他の相続人に公開しなかった場合は上記の⑤に該当し、相続権を失います。ただし、相続欠格者に当該被相続人の直系卑属(孫など)がいた場合には、代襲相続されます。

また、遺言書を破棄すると刑事責任を問われることもあります。私用文書等毀棄罪といい、遺言書のような他人の権利義務について書かれた文書を破棄した場合、1月以上5年以下の懲役に処せられます。

このように、発見した遺言書を公開しなければ重いペナルティを背負うこととなるので、たとえ自分に不利な内容の遺言書だったとしても、他の相続人に公開しなければなりません。

 

遺言書を公開しなくても相続欠格にならないケース

遺言書を公開しない理由が「自分に不利な内容だったから」以外のケースもあります。

例えば、死亡した父親の「すべての財産を長男に相続させる」と書かれた遺言書を長男が発見した場合、長男にとっては有利な内容であるため、隠匿する必要はないと感じるかもしれません。しかし、その遺言内容では母親や他の兄弟と遺産をめぐって紛争が起こる可能性を考え、あえて公開しなかった場合、長男は相続欠格者になるのでしょうか。

判例では、相続人による遺言書の破棄・隠匿行為が「相続に関して不当な利益を目的とする」ものではないときは相続欠格者に当たらないと判断しています。長男にとって有利な遺言書を隠匿することは、長男自身の利益ではありません。あくまで破棄・隠匿した本人に不当な利益を得る目的があるかどうかが相続欠格を決める基準になります。

 

自分に不利な遺言書を見つけたときの対処法

先述した通り、どんな自分に不利な遺言書でも隠匿すると一切の遺産相続ができなくなります。それでも遺言に書かれた通りに遺産分けされるのを阻止したい場合、または遺言内容に異議がある場合は、次の2つの方法で遺言について争うことができます。
 

①遺言無効確認の訴え

被相続人が書いた遺言は無効であると主張する方法です。遺言が無効になるケースとして次のような例が考えられます。
 

(1)自筆証書遺言で遺言者による自書、日付、署名、押印がない

法律上、正式な遺言書は本人による自書であることと、日付、署名、押印が必要です。自筆証書遺言は、遺言書に詳しい専門家が介入することなく、遺言者本人が一人で作成することがほとんどであるため、遺言としての要件を満たさず、遺言が無効となる可能性があります。
 

(2)遺言作成時、遺言者に認知症の症状があった

遺言は、15歳以上かつ遺言能力のある人が作成できます。認知症で遺言能力の有無が問われる場合、自筆証書遺言、公正証書遺言ともに遺言が無効になることがあります。一方で、症状が軽度だったり認知症でも遺言能力があると判断されたりすれば遺言書が有効となることもあります。そのため、遺言者の遺言能力を争う場合は遺言作成時の被相続人の認知能力について立証できる資料が必要となります。
 

(3)公正証書遺言で遺言者による口授がなかった

公正証書遺言は、作成時の状況によっては無効になることがあります。例えば、公証人の質問に対して言葉を発せず頷いただけ(最判昭和51年1月16日)の場合、公証人の手を握り読み聞かせに対して握り返しただけ(東京地判平成20年11月13日)では口授があったものとは認められないとして、遺言無効の判決が出ています。
 

②遺留分侵害額請求を起こす

遺留分とは、法律上最低限相続できることが保証されている相続人の権利です。先述した「財産を全て長男に相続させる」と書かれた遺言は、他の相続人の遺留分を侵害していることになります。

そこで、他の相続人が長男に対し遺留分侵害額請求を行使できます。法的な手続きになるので、詳しくは相続に詳しい弁護士にご相談のうえ、手続きを進めることをおすすめします。なお、遺留分侵害額請求権は相続開始及び遺留権侵害の事実を知った時から1年で時効によって消滅するので、早期に手続きを進めましょう。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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