検認
遺言書の保管者が、相続開始後家庭裁判所に遺言書を提出して、その存在と内容を公に確認する手続を検認(けんにん)といいます。
家庭裁判所に検認の申立てを行うと、相続人全員に検認手続の期日案内がなされ、相続人は家庭裁判所に出頭して検認手続に立ち会うことができます。
検認手続が終わると遺言書のコピーとともに検認調書が作成され、「便箋4枚にボールペンで書かれている」「~に印がされている」「封筒の表に『遺言書』と書かれている」など、遺言の形状についての記録が家庭裁判所に残されます。検認手続に立ち会わなかった相続人も、この検認調書を裁判所から取り寄せることで遺言書の内容を確認できます。
検認調書には、検認手続に立ち会った相続人のコメントも残されます。ここで「被相続人の筆跡ではない」、とか「遺言者は騙されて書かされたから無効だ」、などとコメントする相続人もいますが、検認手続では遺言の有効性についての判断はしてくれません。あくまで遺言書の形式を確認するだけの手続です。遺言の効力は、遺言無効確認訴訟などの場で主張する必要があります。
遺言書に封がされている場合、検認手続の場で開封します。誤って検認前に開封してしまっても遺言の効力が失われるわけではありませんが、他の相続人から無用の疑いをかけられないためにも、検認前に遺言を開封するのはやめましょう。実際に適用された事例があるかは不明ですが、検認前の開封には過料の制裁が一応あります(民法1105条)。
なお公正証書による遺言は、既に公証人によってその存在と内容が担保されているため、検認手続を行う必要はありません。