遺留分の計算方法
1 自分の遺留分はいくら?
遺留分を計算する際は,民法に定められている割合にしたがって計算する必要があります。また,計算の基礎となる財産についても,定めがあります。この機会に,遺留分の計算方法を確認しておきましょう。
2 遺留分の率
直系尊属のみが相続人であるときは,被相続人の財産の3分の1であり,その他の場合は被相続人の財産の2分の1となります。
相続人 | 配偶者 | 直系卑属 | 直系尊属 |
---|---|---|---|
単独相続の場合 | 1/2 | 1/2 | 1/3 |
配偶者と共同相続の場合 | ― | 1/2 | 1/2 |
※遺留分権利者は,兄弟姉妹を除く法定相続人です。
遺留分権利者が複数いるときは,全体の遺留分の率に,それぞれの遺留分権利者の法定相続分の率を乗じたものが,その人の遺留分の率となります。
たとえば,相続人が配偶者Aと子BCDであれば,Aの遺留分の率は,1/2×1/2=1/4。BCDは,それぞれ1/2×1/2×1/3=1/12
3 遺留分算定の基礎となる財産
遺留分の率が判明したら,次に遺留分の計算の基礎となる財産を確認する必要があります。遺留分算定の基礎となる財産とは,被相続人が相続開始時において有した財産(相続財産)に贈与された財産を加え,これから債務を控除したものが,遺留分算定の基礎となる財産となります。
4 贈与された財産
遺留分算定の基礎となる財産に算入される贈与は,①相続開始前の1年間にしたもの,②当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したもの,③不当な対価による有償行為,相続人が被相続人から受けた贈与です。(③について,2019年7月1日に施行される民法(相続関係)改正法により,相続人に対する贈与は,相続開始前の10年間にされたものに限り遺留分の基礎財産に含めることとなります(改正民法1043条)。)
ここにいう「贈与」とは,贈与契約として規定するものに限らず,すべての無償処分を意味し,寄付行為,無償の債務免除,無償の人的・物的担保の供与も含まれます。
5 遺留分の計算例
先の例をもとに計算してみましょう。
相続人:配偶者A,子BCD
遺産総額:1000万円
相続開始前の1年間にした贈与:500万円
債務:300万円
①遺留分算定の基礎となる財産
1000万円+500万円-300万円=1200万円
②配偶者Aの遺留分
1200万円×1/2(遺留分割合)×1/2(法定相続分)=300万円
③子BCD全員の遺留分
1200万円×1/2(遺留分割合)×1/2(3人の法定相続分の合計)=300万円
④子一人あたりの遺留分
600万円×1/6(法定相続分)=100万円
6 算出した遺留分が侵害されていた場合
算出した遺留分が侵害されている場合,遺留分を侵害した人に対して,遺留分減殺請求をすることができます。遺留分を侵害する贈与は,当然に無効になるわけではありません。遺留分減殺請求をすることで初めて財産が復帰します。遺留分減殺請求にはいくつかの方法がありますが,いずれの方法をとるにしても弁護士のサポートがあるほうが,迅速かつ円滑に遺留分を取り戻せる可能性が高まります。