



故人が何度も遺言書を書き直した結果、複数の遺言書が残されるケースがあります。その場合、遺族としてはどう対処するべきなのでしょうか。この記事では、複数の遺言書が見つかったときの処理について解説します。
複数の有効な遺言書がある場合、もっとも日付の新しいものが「有効」な遺言書として扱われます。
したがって、複数の遺言書を見つけたら、まずは日付を確認することが大切です。
自筆証書遺言、つまり手書きの場合は、有効な遺言書であるかどうかの確認も必要です。
たとえ日付が最新のものであっても、署名・押印がなかったり、本文がパソコンで書いてあったりすると、遺言書としては無効になってしまいます。遺言書の日付だけでなく、形式に不備がないかどうかもチェックしておきましょう。
形式面だけでなく、内容面のチェックも重要です。複数の遺言書があっても、内容が抵触していない部分についてはどの遺言書も有効になるからです。
逆に、抵触している部分については、より日付の新しい遺言書が有効になります(民法1028条)。
たとえば、遺言書その1に「自宅土地・建物は配偶者Aに、X銀行の貯金5000万円は長女Bに、車は次男Dに相続させる」、より新しい遺言書その2に「自宅土地・建物は配偶者Aに、X銀行の貯金5000万円は長男Cに、株式は次女Eに相続させる」と書いてあったとします。
この場合、自宅の土地・建物、車、株式については遺言書その1・その2に抵触している部分がないため、どちらの遺言書の内容も有効です。自宅の土地・建物はAが、車はDが、そして株式はEが相続します。
一方、預貯金については、遺言書の内容に矛盾抵触があるため、遺言書その2の内容が有効となります。したがって、預貯金を相続するのはCということになります。
遺言書が複数見つかった場合など、相続の問題で困ったときは弁護士にご相談ください。法律のプロである弁護士のサポートを受けることで、遺言書の偽造が疑われるケースや遺留分が問題になるようなケースなど相続についてトラブルが起きそうな事態にも、適切に対処できます。
また、自分の死後に備えて、きちんとした遺言を残しておきたい、という方には、遺言書の作成に関するアドバイスも行います。
相続で失敗しないためにも、法律のプロのアドバイスを受けることをおすすめします。
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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