



家族から「遺言書を書いておいてほしい」と言われると抵抗を覚える人は少なくありません。しかし、遺言書を作成しておけば、残された家族は相続手続きをスムーズに進められます。自分の死後に相続財産をめぐるトラブルを未然に防げるメリットもあるのです。
それでもなんとなく「まだ書きたくない」と思うのは、おそらく遺言書ではなく「遺書」を書こうとしているからかもしれません。「遺言書」と「遺書」、字面はよく似ていますが意味は全く違います。ここでは遺言書と遺書の違いについて詳しく解説します。
目次
遺言者が記述した内容が「法的効果があるかないか」によって遺言書または遺書が分かれます。「遺言書」は、法的効果のある法律文書であり、法律上の効力が及ばないのが「遺書」です。
また、遺言書には日付や氏名の記入、押印の有無など、有効な遺言書として成立させるためには厳格なルールがあり、これに従わなければ遺言は無効となります。遺言書は作成した日付がなければ無効になるのですが、例えば「令和3年1月吉日」という記載でも無効になるほど、そのルールは極めて厳格なのです。
遺言書に記述する内容は、法律で決まっています。具体的には次の通りです。
遺言書は書かれている内容に法的拘束力があるので、相続人が「遺産を受け取る」「認知されて相続権が発生する」といった財産権や身分権に直接影響を及ぼします。
その一方、遺書は遺言書のように記載内容に決まりはなく、個人の所感や心情、遺恨など、プライベートな要素が強い側面があります。かりに相続に関する記述があったとしても、遺書なら法的効果がないのでそれに従う必要もありません(遺言書の要件を満たしていればこの限りではありません)。
遺書は遺言書のように記述する内容に決まりはありません。死期が間近に迫っている人が思いの丈を手紙に綴り、残された家族に読んでもらうことが遺書の役割です。
そのため「遺書を書いてほしい」と言われれば「縁起でもない」と思われるのも無理はありません。自分はまだ元気なのに死後に備えて思いのままに感情を綴るのはまだ早いと感じるでしょう。しかし「遺言書」は死期が迫っていなくても満15歳以上で遺言能力がある人ならいつでも、だれでも作成できる点で両者は異なります。むしろ認知機能が衰える前の元気なうちから遺言書を作成することは、将来への備えにもつながります。
なお、遺言書でも公正証書遺言を作成するときは「付言事項」といって遺言者の思いを遺言の最後に記述しています。遺産分割の方法を指定した理由だけでなく、生前の感謝の思いを伝えることもできます。自筆証書遺言でも同様に、相続に関する事項以外にも作成当時の思いやメッセージを遺言書に記述しても構いません。あまりに長文になりそうな場合はエンディングノートを活用しても良いでしょう。
自筆証書遺言の場合、遺言書を見つけたときはその場で開封できません。万が一、開封してしまった場合、5万円以下の罰金が科されることもあります。
遺言書の開封になぜここまで厳密に規定されているかというと、開封した人によって遺言書を偽造されるおそれがあるためです。遺言書の公平性と客観性を維持するため、遺言書を見つけたときは相続人による立ち合いのもと家庭裁判所で「検認」の手続きをする必要があります。
検認は遺言書の存在を公に確認する場であり、遺言の有効性を判断するものではない点も注意しましょう。
なお、公証役場で作成した公正証書遺言は、公証人2名の立ち合いのもと、遺言者が口授した内容を公証人が記述する方法で作成するので、検認は不要です。また、2020年から始まった自筆証書遺言の保管制度を利用した遺言書も検認は不要とされています。
一方、私的な文書である遺書は、見つけ次第その場で開封が許されています。宛名が書かれていればその本人が開封するのが望ましいでしょう。
遺言書と遺書では全くの別物であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。遺言書は遺書とは違い、将来起こりうる相続争いを未然に防止する役割があります。遺言書を作成しておけば、自分の希望通りで、なおかつ相続人同士でトラブルが起こらないような遺産分割が行われる可能性が高くなります。
遺言書があれば自分にとっても相続人にとってもメリットがあります。健康なうちに将来に備えて作成するべきでしょう。遺言書の作成の方法や遺言方式について詳しく知りたい方は、相続に強みを持つ弁護士にお気軽にお問い合わせください。
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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