



遺言には「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の2種類があることをご存じでしょうか。自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言など、平時の状態で作成する遺言は「普通方式遺言」で、普通方式遺言を作成できないケースにおいて「特別方式遺言」を作成します。「特別」の文字からもわかる通り、特別方式遺言はかなり特殊な状況下で作成されるものです。
ここでは、特別方式遺言の違いと種類、有効な遺言として成立するための要件について詳しくご紹介します。
目次
特別方式遺言は普通方式遺言よりも要件が緩和されています。また、遺言者が普通の方式で遺言作成できるようになった時から6か月間生存していれば、その特別方式遺言は無効となります。
また、特別方式遺言にも状況に応じて種類が分けられています。
病気やその他の事由により命の危険が差し迫っているとき、普通方式遺言の作成が困難な場合に危急時遺言で遺言を作成します。
一般危急時遺言を作成する場合、次の要件を満たす必要があります
一般危急時遺言は、遺言された日が証人と立会人によって証明できることから、日付の記載はなくても有効とされています。
船舶や飛行機に搭乗しているときに遭難あるいは事故などにより、命の危険が差し迫っている場合に作成する遺言書です。「難船危急時遺言」とも呼ばれます。船舶遭難者時遺言は、遺言者本人だけでなく証人となる人にも命の危険が迫っていることが考えられるため、一般危急時遺言よりも要件がかなり緩和されています。
上記危急時遺言には自筆証書遺言のような「検認」は必要ありませんが、遺言者の真意であるかどうかを判断する「確認」の手続きは必要となります。船舶遭難者遺言には確認の期限がないのに対し、一般危急時遺言は作成から20日以内に証人の一人または利害関係人(相続人、遺言執行者など)が家庭裁判所に請求しなければなりません。
これは、死亡の危急が迫った人に対し、一部の相続人や利害関係人が、遺言者の真意に基づかない危急時遺言をさせる弊害を避けるために設けられたものです。
なお、確認の手続きをしたからといって有効な遺言と認められるものではない点に注意が必要です。家庭裁判所は、遺言が遺言者の真意に沿ったものであるかどうかを判断する程度であり、遺言書の効力を争う場合は別途民事訴訟によって判断されます。内容的に無効になる可能性がある点にも注意しましょう。
隔絶地遺言は、伝染病や交通手段の絶たれた人が作成する遺言書です。裁判所による確認手続きは不要となります。
伝染病に感染した人など、普通方式遺言の作成が困難な場合に作成されるものです。「伝染病」とありますが、それ以外にも行政処分を受けて交通手段を絶たれた場所にいる場合もこの方式で遺言作成できます。
船舶隔絶地遺言は、長期間航海に出ていて陸地に戻ることができない場合に作成されます。先述した船舶遭難者遺言とは違い、遭難や生命の危機が迫っているものではなく、あくまで一般の交通手段が遮断されたケースを想定しています。
特別方式遺言は、いずれもかなり特殊な状況下で作成されることがおわかりいただけたと思います。
特に、船舶遭難者遺言や船舶隔絶地遺言の場合、法律上有効な遺言書が確実に作成できるとは限りません。証人の人数の不足、あるいは証人にも生命の危機が迫っている可能性も考えられ、遺言内容を筆記できる事態ではないおそれもあります。また、船舶遭難者遺言は、遺言が作成できたとしても遭難していて陸地に届かないことも考えられます。
こうした特別方式遺言を急遽作成する必要のないよう、平時に普通方式遺言を作成することが大切です。普通方式遺言なら遺言内容をあらかじめ決めておける上、作成にあたっては遺言に詳しい専門家に相談しながら進めていくこともできます。
それでも特別遺言方式に頼らざるを得ない状況が発生した場合に備え、法的に有効な特別遺言方式があることを覚えておくとよいでしょう。
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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