配偶者控除について | 神戸相続弁護士 福田法律事務所

WEB相談も受け付けております
078-366-6760

電話受付 9:00~17:00 (平日)

相続コラム画像

配偶者控除について

配偶者控除は相続税対策のうちのひとつとしてよく知られています。「1億6000万円以内なら配偶者の相続税はゼロ」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。ただ、利用するには注意が必要な制度でもあります。ここでは、配偶者控除についての概要と、利用する際の注意点について詳しくご紹介します。

 

配偶者控除とは

配偶者控除は、配偶者が相続した相続財産の総額が1億6000万円以内なら、配偶者に相続税がかからない制度です。正式には「配偶者の税額軽減」と呼ばれます。

この相続税対策を知ると「うちには1億6000万円も財産はないから、配偶者が相続するときは確実に相続税はかからない」と思う方が多いかもしれません。実際にその通りなのですが、「では1億6000万円以上ある人は相続税がかかるのか」というと、必ずしもそうではありません。

というのも、「1億6000万円」か「配偶者の法定相続人の相当額」のどちらか多い金額までは相続税が課されないからです。わかりにくい表現なので具体例を使って説明します。

例えば、被相続人の遺産が1億5000万円ある場合、1億6000万円より低い金額なので、配偶者控除を受けられます。

では、被相続人の遺産が10億円ある場合はどうでしょう。一般的に知られている法定相続分は配偶者の一方が亡くなった場合、配偶者と子どもが遺産の2分の1ずつを相続します。すなわち、妻の法定相続分は5億円で、1億6000万円を超えていますが「配偶者の法定相続分相当額」にあたるので5億円でも相続税は非課税になるのです。
 

配偶者控除の制度趣旨

配偶者控除ができた背景として次の3つがあると言われています。

  • ・残された配偶者の生活を保障
  • ・被相続人の財産の増加に寄与している
  • ・その後配偶者が亡くなった時、同じ財産に対して短期間で2度の相続税を課さないようにするため

特に高齢な夫婦の場合、相続が立て続けに開始される可能性もあるので、納税者の痛税感を少なくするためにも、配偶者控除は重要な制度と言えます。

 

配偶者控除の利用要件

このように、残された家族にとってはぜひ活用したい配偶者控除ですが、利用するには次の要件に該当する必要があります。
 

①戸籍上の配偶者であること

婚姻届けを提出している法律上の夫婦でなければなりません。内縁者や数十年以上同居している事実婚でもNGです。
 

②必ず相続税の申告をすること

配偶者控除により相続税がゼロ円でも、相続開始から10か月以内に必ず相続税の申告をします。
 

③遺産分割が確定していること

配偶者控除を受けるには、遺産分割協議を終えて、分割内容について相続人全員の同意を得ていることが必要です。相続税の申告期間内に確定しなかった場合は、相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して納税手続きをしましょう。その後、3年以内に修正申告を行います。調停や裁判により3年以内の申告が難しい場合は、税務署長の承認を受けることで延長できます。
 

④隠蔽された財産でないこと

相続税申告時に隠蔽された財産が税務調査により新たに発見された場合、その隠蔽された財産について配偶者控除は適用されません。
 

二次相続時に注意しなければならない理由

配偶者控除を利用した場合、二次相続で相続税がかなりの負担になる可能性があります。相続分に応じた相続額に対し、どれくらいの税率が課され、控除されるかをまとめると、下の表のようになります。
 

法定相続分に応じた相続額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円以上 55% 7,200万円

 
例えば、夫、妻、長男、次男の4人家族で、妻が現役時代の貯蓄や親からの相続などにより3000万円の固有の資産があったとします。そして夫がなくなったときに妻が1億円を相続したとした場合、資産総額は1億3000万円になります。

その後、妻が1億3000万円の資産を残して亡くなった場合、長男と次男は相続税率が30%課されることになります。

仮に妻が夫からの相続時に1億円ではなく、5000万円を相続していたら資産総額は3000万+5000万円=8000万円で、子が負担する相続税率は20%。つまり、配偶者控除を利用したために、かえって高い相続税を払うおそれがあるのです。

配偶者控除を活用しようとあまり多くの資産を妻に残すことはおすすめしません。「これだけあれば暮らしていけるだろう」という金額を予想して、あまり多くの財産を妻が相続しないようにした方が節税につながることもあるので注意すべきです。

わかりやすくするためざっくりとした計算でご紹介しましたが、配偶者控除を利用した相続税対策をする場合は、二次相続を考慮した上で相続する金額を決めることが大切です。子がいない夫婦が利用するなら問題ありませんが、高齢な夫婦で子がいる場合は上記の理由で二次相続の際に注意が必要です。残された配偶者が生活していく上で、本当に必要な金額はどれくらいなのかを試算した上で遺産分割を進めるべきでしょう。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

この記事と関連する相続コラム

相続した不動産を売却した場合の税とは?相続税も含めて解説

事業承継の相続対策

相続税の申告

誰もが取り得る相続税の節約方法

相続対策としての養子縁組の是非

相談実績年間100件以上! 実績豊富な3名の弁護士が在籍!

神戸で相続・遺産分割のお悩みは、
福田法律事務所にお任せください。

(初回60分 相談無料 ご予約で夜間/休日対応可能)