他の相続人と話し合いがつかない
目次
このページの目的
このページでは、他の相続人との間の遺産分割協議が進まない、話し合いができないケースについて、その原因と対策方法について説明します。
遺産分割の原則は相続人間の話し合い
被相続人が死亡した場合、遺産は原則として相続人全員で共有している状態になります。
共有状態にある遺産を、各相続人に具体的に分割するのが遺産分割です。
遺産分割は、すべての相続人が合意して初めて成立します。ですので、まずは相続人間で話し合いをするのが基本です。これが遺産分割協議です。
このとき、1人でも協議に参加しない相続人がいると、遺産分割協議自体が無効になります。もし連絡が取れない相続人がいれば、その相続人を探し当ててでも協議に参加してもらう必要があります。
遺産分割協議がまとまらないとどうなるか
遺産分割協議がまとまらないと、遺産を分けることも処分することもできません。
遺産が不動産であれば、登記はずっと被相続人名義のままです。売却しようと思ってもできません。また、預金や株式などもずっと解約・払戻できないまま凍結状態になります。
そして、遺産分割協議には期限がありません。したがって話し合いがまとまらなければ、遺産が事実上ずっと凍結されたままになるのです。
遺産分割協議が進まない原因は何か
ここで、遺産分割協議がまとまらない原因を考えたいと思います。これまでの経験上、遺産分割協議が進まない原因は以下の類型に分けられます。
1 遺産の内容がわからない
遺産があることはわかっているが、どこにあるかが分からない場合です。
不動産や株を買ったと生前に聞いたことがあるが、きちんと聞いたことがなかったので今では探すにも手掛かりがない、というパターンです。
遺産が特定できなければ、分割のしようがないので、遺産分割が進まない原因になります。
特定の相続人が、相続開始前から遺産となる財産を管理していて、他の相続人に遺産内容を開示しないような場合も、このケースにあたります。
2 遺産分割以前から関係性が破綻している
共同相続人となる親子・兄弟間でもともと関係性がよくない場合です。
関係が良くない原因は様々ありますが、この場合、感情的な対立が先に出てしまい、遺産分割という経済的利益の調整が難しくなります。
また、相続人同士の関係性は悪くなくても、その家族同士の関係がよくないために、協議が難しくなっているケースもよくあります。
3 当事者が多すぎる・連絡がつかない
当事者が多すぎて収拾がつかないというのも、地味ですがよくある話です。遺産分割協議は相続人全員で行わないといけないので、相続人が増えるほど話し合いが難しくなります。
典型例は、土地の登記名義変更をどこかで怠ったまま数世代が経過したたために、現在ではもとの名義人の相続人が増えすぎて、他の相続人がどこの誰かもわからなくなって連絡がつかないケースです。
遺産分割ができないまま相続人が亡くなると、相続人の相続人に引き継がれるので、どんどん当事者が増えていくことになります。
4 協議するメリットがない相続人がいる
例えば、自宅不動産が唯一の遺産だとします。これまで被相続人の自宅に無償で同居してきて、亡くなっても引き続き住んでいる相続人は、他の相続人と遺産分割協議をするメリットがありません。
なぜなら、遺産分割することになれば、そこから退去するか、他の相続人に家賃を支払うか、お金を払って買い取るか、いずれにしてもこれまでより経済的負担が増える方向にしかならないからです。
この場合、その相続人は遺産分割に消極的になりがちです。協議を求めても返事がないなど、遺産分割協議が進まない要因になります。
また、価値が低い不動産の管理や維持費の支払を1人の相続人に押し付けているケースや、生前に特定の相続人が財産を取り込んでしまって遺産が何も残っていないケースもこれに近いといえます。
このような状況の相続においては、そのまま何とか協議を継続しようと努力しても、むなしく時間だけが過ぎていくケースが残念ながら多いです。
遺産分割の話し合いがつかない場合
では、遺産分割の話し合いがうまくいかない場合は、どうしたらいいでしょうか。家庭裁判所の遺産分割調停に持ち込む方法がありますが、その前に弁護士の起用を検討してみてください。
弁護士による財産調査
相続分野の経験豊富な弁護士であれば、通常どのような遺産がどのような形で存在するか、それを探索するにはどのような方法をとればよいかのノウハウを持っています。
上記1の「遺産の内容がわからないケース」では、弁護士に依頼することで、自分で遺産を調査するよりも
弁護士による交渉代理
相続人間で遺産分割の話し合いができない、あるいは話し合いがまとまらないときは、その段階で弁護士に遺産分割交渉を依頼して、他の相続人と遺産分割協議をまとめるべく交渉してもらうことができます。
上記2の「遺産分割以前から関係性が破綻している」ケースのように、身内だけでは感情的な問題等で話し合いが進まない場合でも、弁護士という外部の人間が介入することで冷静に話し合いができ、協議がまとまるケースも多くみられます。
直接話せば喧嘩になりそうな相手との交渉を弁護士に委ねることで、精神的な負担から解放されるメリットもあります。
また、上記3の「当事者が多すぎる・連絡がつかない」ケースでも、弁護士は戸籍をたどって附票を取り寄せるなどの方法により、当該相続人の連絡先を探し出します。探し出したあとの交渉を、第三者的に冷静に進められることは上記と同じです。
弁護士が見通しをつける
上記4の「協議するメリットがない相続人がいる」ケースでは、いつか相手が協議に応じることを期待して待っていても、漫然と時間が経過していくだけです。
実際、手をこまねいたまま十数年経過してしまったというご相談もたくさんあります。
弁護士であれば、交渉、調停、審判、訴訟、その他の手段をすべて選択肢に入れて、相手を動かすためにはどのようにすればよいか、アイディア・ヒントを示すことができます。
これによって、どこまでに何をすべきか、見通しと具体的な戦略を立てることができるようになります。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。