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被相続人の生前に遺留分を放棄させることはできる?

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者もしくは子・直系尊属)に認められている、最低限の遺産の取り分です。

この遺留分は、放棄することも可能です。

では、被相続人がまだ生きている段階から、遺留分の放棄は可能なのでしょうか。今回は、遺留分放棄の具体的な手続きや注意点などを解説します。

生前でも遺留分放棄は可能

遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人について遺産の最低保証額を定めているという性質上、被相続人であっても奪うことができない権利です。しかし、被相続人の生前であっても、放棄することは可能です。

ただし、自由に放棄が認められるわけではありません。被相続人が生きている間は、決められた手続きを経たのち、遺留分放棄が認められます。

生前の遺留分放棄に必要な手続きとその流れ

遺留分の放棄は、厳密にいうと「遺留分の請求、受け取りをしない」という意味になります。また、遺留分の放棄については民法1049条に記載があります。

第1049条 (遺留分の放棄)

1 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。

2 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

この条文の1項をみてわかるとおり、遺留分の放棄には「家庭裁判所の許可」が必要です。具体的には以下のような手続きを行うことになります。

生前の遺留分放棄に関する手続き

裁判所に申立書を提出する

将来相続が発生する方(以下「被相続人」といいます)の現住所を管轄する家庭裁判所に遺留分放棄を申し立てます。

家庭裁判所所定の「遺留分放棄の許可を求める審判」の用紙に必要事項を記載し、提出します。

ちなみに書式はこちらから参照できます。

また、被相続人と申立人の戸籍謄本や、800円分の収入印紙、連絡用の郵便切手も必要です。

さらに、申立書には財産目録も記載する必要があるので、あらかじめ被相続人と協力しながら財産調査を済ませておきましょう。

参考:裁判所「遺留分放棄の許可」

 

家庭裁判所から審問期日が通知される

提出した申立書が受理されると、家庭裁判所から「審問期日」が通知されます。これはいわゆる「ヒアリングを受ける日」と考えてください。ちなみに遺留分放棄の審判では、

・本当に本人が希望して遺留分を放棄するのか

・遺留分を放棄する合理的な理由があるか

・遺留分を放棄する者に対し、被相続人から代償(贈与など)が払われているか

などが許可・不許可の判断基準になります。

遺留分放棄の許可・不許可通知がくる

審問が終わってしばらくすると、家庭裁判所から遺留分放棄の許可または不許可の通知が届きます。

遺留分放棄が許可されたら、「遺留分放棄の許可証明書」を発行しておきましょう。

相続手続きをスムーズに進めるために必須の書類です。ただし、遺留分放棄の許可はよほどの理由が無い限り撤回できません。後悔しないよう、しっかりと意思を固めてから臨むようにしましょう。

被相続人の死後に遺留分放棄をするときは?

被相続人の死後、つまり相続が開始されてから遺留分を放棄する場合は、生前よりも手続きが簡単です。

方法は2通りあり、ひとつは「他の相続人に遺留分放棄を伝える」、もうひとつは「遺留分侵害額請求権の消滅を待つ」というものです。ちなみに遺留分侵害額請求権は消滅時効が1年、除斥期間が10年です。

第1048条 (遺留分侵害額請求権の期間の制限)

遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。

すなわち「遺留分に関する権利を行使できると知ってから1年」もしくは「単純に相続開始から10年」のどちらか短い方までということです。

つまり、被相続人が亡くなったあとに遺留分を放棄したいならば、基本的には1年間、何もしないでおけば良いことになります。

遺留分を放棄する際の注意点

遺留分を放棄する際の注意点は以下の5つです。

  • 遺留分を放棄しても借入金などの相続は避けられない
  • 遺言書を作成しないと特定の相続人に遺産を集められない
  • 家庭裁判所への申し立てが必要
  • 遺留分の放棄は他の相続人の遺留分に影響しない
  • 遺留分放棄の代償での贈与は他の相続人の遺留分を侵害する恐れがある

遺留分を放棄しても借入金などの相続は避けられない

遺留分の放棄は、相続における一定の取り分を主張しない意思表示です。しかし、これだけでは借入金などの負債から逃れることはできません。遺留分放棄は相続権そのものを手放す手続きではないからです。

負債を含めて一切の相続を拒否するには、相続放棄が必要です。相続放棄は被相続人の死亡を知った日から3カ月以内に家庭裁判所で手続きしなければなりません。遺留分を放棄しても相続人としての地位は残るため、債務の承継を避けたい場合は相続放棄などの対応が必要です。

遺言書を作成しないと特定の相続人に遺産を集められない

遺留分の放棄だけでは、特定の相続人へ財産を集中させることはできません。遺留分放棄は遺留分の請求権を手放す手続きであり、遺産の分配方法を決めるものではないからです。

財産を望む相続人に確実に承継させるには、被相続人が遺言書を作成する必要があります。遺言書で具体的な配分を指定することで、意図した遺産相続を実現できます。遺留分放棄と遺言書の作成を組み合わせることで、円滑な財産承継が可能です。

家庭裁判所への申し立てが必要

生前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所への申し立てが必須です。当事者同士で合意書や念書を交わしただけでは法的な効力は生じません。

家庭裁判所は申し立てを受けて、放棄が本人の自由な意思に基づくものか、強制されていないかなどを慎重に審査します。許可の審判が下りて初めて、遺留分放棄の効力が発生します。家庭裁判所での手続きを省略すると、後から遺留分を請求される可能性があるため注意が必要です。

遺留分の放棄は他の相続人の遺留分に影響しない

1人の相続人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分が増えることはありません。遺留分の放棄によって手放された部分は、被相続人が自由に処分できる財産になるだけです。

遺言書がある場合は、遺言内容に従って配分されます。遺言書がなければ法定相続分に基づいて分けられます。放棄した遺留分は他の相続人に自動的に振り分けられません。被相続人の意思や法律に従い、行き先が決まります。

遺留分放棄の代償での贈与は他の相続人の遺留分を侵害する恐れがある

遺留分を放棄してもらう見返りとして、被相続人が多額の贈与をするケースがあります。しかし、この代償が高額すぎると問題が生じる可能性が高いです。

過大な贈与によって相続財産が減少すれば、残された他の相続人の遺留分が確保できなくなる恐れがあります。結果的に、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクが高まるでしょう。代償として贈与する際は、他の相続人の権利を損なわない適正な金額かどうか弁護士に相談しましょう。

遺留分放棄は「権利義務の放棄」ではない

遺留分の放棄は、あくまでも「遺留分侵害額請求権」を失う手続きにすぎません。遺留分を放棄しても引き続き相続には関係があり、遺産分割協議にも参加する必要があります。

そのため、「自分は相続に関わりたくないから」と安易な考えでの遺留分放棄はおすすめしません。

もし、他の相続人との利害関係や遺産の調整を目的として遺留分放棄を考えているならば、必ず相続に強い弁護士に相談しましょう。特に、家庭裁判所への申立てや審判の手続きがある生前の遺留分放棄ならばなおさらです。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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