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特別寄与料はどの程度認められるか

2018年の法改正により、相続人でなくても被相続人に特別な寄与をした人は、相続人に対して特別寄与料を請求できるようになりました。それまで相続人にのみ認められていたため、相続人以外の人が寄与分を主張あるいは請求できませんでしたが、被相続人の療養看護に尽くした人の貢献に報いるため、特別寄与料の制度が新設されたのです。

この度の法改正により、特別寄与料として認められる要件と、特別寄与料の計算方法についてご紹介します。

 

<h3>特別な寄与とは</h3>

寄与分は一般的に「家事従事型」「財産給付型」「療養看護型」「扶養型」「財産管理型」という5つの類型に分かれていますが、特別な寄与では「家事従事」や「療養看護」といった労務の提供が重要視されます。

法改正の前は相続人でなければ特別な寄与があった場合でも、相続人以外が遺産を受け取ることはできませんでした。例として、被相続人の長男の嫁が長期間にわたって献身的な介護を行っていた場合でも、長男の嫁本人が遺産を受け取れず、長男が法定相続分以上の財産を取得するなどして、実質的な公正を図る方法がありました。

しかし、今回の改正によって、「長男の嫁」のような相続人でなくても特別な寄与をした場合、相続人に対して特別寄与料を請求できるようになりました。あくまで相続人に対して特別寄与料を請求するものであり、特別な寄与をした本人が相続人になるわけではない点に注意しましょう。

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<h3>特別寄与料が認められる範囲とは</h3>

特別寄与料が認められるには次の要件を満たす必要があります。

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<h4>①被相続人の相続人以外の親族であること</h4>

6親等以内の血族、3親等以内の姻族であることが条件となります。内縁の妻や親族以外の人には認められません。

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<h4>②被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより、被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与をしていたこと</h4>

特別な寄与をした人が被相続人から対価を得ていた場合は、特別寄与料を請求することはできません。被相続人が遺言で、特別な寄与をした人の利益になるような遺言をしていた場合も同様です。

「被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与」とは、「長男の嫁が介護してくれたおかげで高齢者施設に入居することなく、被相続人の財産は減らなかった」というように、療養看護が財産の維持または増加に因果関係があることが要件となります。

また、「特別な寄与」の中身については、「通常期待される程度を超える労務の提供があったこと」と定義されています。具体的には、労務の専従性、無償性、継続性の観点から、「特別な寄与」なのか「通常の寄与」なのかを判断します。例えば、デイケアなど介護施設などをほとんど利用せず自力で身の回りの世話を行ったり、認知症だった被相続人を昼夜問わずサポートしたりといったケースが考えられます。

なお、労務の提供が無償であったかどうかは、当事者の認識、労務提供の期間や程度によって個別に判断することとなります。

被相続人に対しどの程度の寄与があったのかを判断するために、普段から介護の記録を残しておくことをおすすめします。日付と具体的なケアの内容など、介護日誌をつけておくと特別寄与料が認められる可能性が高くなります。

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<h3>特別寄与料を請求できる期間</h3>

通常の相続では相続開始を知った時から10か月以内に相続税の納付義務があります。しかし、特別寄与料の請求手続きは、遺産分割手続きとは全くの別物とされているため、「特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6か月」以内及び「相続開始の時から1年」以内とされています。

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<h3>特別寄与料の計算方法</h3>

特別寄与料は下記の計算式を用いて計算します。

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介護の日当額×日数×裁量的割合=特別寄与料

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日当額は介護士の事例を目安とし、裁量的割合は家庭裁判所がケースに応じて判断します。例えば、介護の日当額8000円、介護をした日数が600日、裁量的割合が70%の場合、8000×600×0.7=336万円を特別寄与料として相続人に請求できます。

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<h3>特別寄与料について当事者間で争いがある場合、まずは弁護士にご相談を</h3>

特別寄与料をそもそも認めるかどうか、あるいは認めるとして金額をいくらにするかは、特別寄与者と相続人による協議で決めます。この協議が調わないときは、特別寄与者は家庭裁判所に対して「協議に代わる処分」を請求できます。

裁判所でこの請求があった場合、寄与の時期、方法や程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して特別寄与料の額を決定し、相続人に対してその支払いを命じることができます。

とはいえ、血縁関係のない他の相続人に対して寄与料を請求しづらいと感じるかもしれません。また、請求できたとしても金額で折り合いがつかない可能性も十分に考えられます。そのようなときは相続に詳しい弁護士にご相談いただければ、本人に代わって相続人との話し合いができます。ぜひ一度ご相談ください。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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