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相続の経費は遺産分割でどこまで分担を求められるか

このページでは、遺産分割において相続人全員で共同分担すべき債務・経費について解説します。

相続人全員で分担すべき債務・経費であれば、遺産からまずそれらを支払い、残りを分割すればよいことになりますが、そういった債務・経費はどこまで含まれるでしょうか。

なお、ここではあくまで民法上の規律に基づき、遺産分割協議や遺産分割調停・審判における扱いについて説明しますので、相続税の計算において債務・経費と扱われるものとは、少し範囲が異なっている点に注意が必要です。

相続債務

相続では、被相続人の財産だけでなく負債も承継します。そして相続人が複数いる場合、複数人でこれを分担することになります。

第899条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。

この「義務」の中に、被相続人本人が負っていた債務、つまり相続債務が含まれます。

被相続人に借金があれば、当然それは相続債務ですが、借金がなかった故人でも、普通以下のような相続債務が発生します。

・亡くなった病院での(最後の)病院代、施設の介護費用
・相続開始時に未払・未請求の市県民税、固定資産税、自動車税など
・亡くなった月の水道光熱費、通信費、クレジットカード利用料
・相続開始後の準確定申告によって決まる最後の所得税

これらの債務は、相続人の間で分担することになります。

相続財産に関する費用

相続財産に関する費用は、相続開始後、遺産分割までに相続財産を維持管理するために発生した費用です。

(相続財産に関する費用)
第885条
相続財産に関する費用は、その財産の中から支弁する。ただし、相続人の過失によるものは、この限りでない。

相続債務との違いは、発生時期です。相続開始後に発生した遺産の維持管理費用は、亡くなった被相続人が負うものではありませんから、相続債務にはなりません。例えば、以下のようなものです。

・相続開始後の不動産にかかる維持管理費(水道光熱費)
・相続開始後に発生する固定資産税、自動車税

葬儀費用、お墓の費用

葬儀費用は、被相続人のために行うわけですから、直感的には遺産から支出してよさそうです。
しかし、葬儀費用は相続開始後に発生するものであり、理論的には相続債務とも相続財産に関する費用ともいえません。

判例では、葬儀費用は葬儀を主催する者(喪主)が負担する費用であり、他の相続人に当然に分担を求めることはできないものとされています。

お墓の費用も同様です。お墓はそもそも祭祀財産として遺産とは別の財産と考えられているので、相続人全員が負担して遺産からお墓の費用を支出するためには、全員の了承が必要になります。

相続税

相続税は、遺産を相続した相続人に対して、相続したことによって賦課される税金です。したがって、これらは各相続人がそれぞれ自分に賦課される相続税を各自で支払います。

相続人全員分の相続税を、遺産から支出できるわけではありません。

弁護士費用

遺産分割協議において、当事者間で話し合いが難しい場合、代理人として弁護士を立てることがあります。この弁護士費用は、その代理人を選任した相続人だけが負担し、他の相続人に分担を求めることはできません。

弁護士は委任した相続人の利益のために働くので、委任していない相続人がこれを負担する理由はないからです。

しかし、複数の相続人がまとめて1人の弁護士に依頼した場合は、当然その相続人間では分担することになるでしょう。

実際の債務・経費の分担をどのようにして決めるか

以上、相続債務、相続財産に関する費用、葬儀・お墓の費用、相続税と、民法上の扱いを順番に見ていきました。しかし、ここまでの話はあくまで法律の原則論です。

実際には、遺産分割協議において相続人全員が合意できるのであれば、どのように分担しても問題ありません。

相続が開始すれば共同相続人間で遺産分割協議を行いますが、協議ができなければ家庭裁判所の遺産分割調停を利用して話し合います。これらの話し合いの中で、相続人全員が了承できる債務・経費の分担が決められます。

特に葬儀費用などは、一般的な社会通念と法律上の扱いがずれているところであり、大半のケースでは誰が喪主になろうとも、遺産から葬儀費用を支出することで合意ができているのが実情です。

また、遺産分割協議によって相続人の誰かが不動産を取得する場合には、相続開始前からその不動産に発生していた固定資産税(相続債務)や、相続開始後、遺産分割協議成立までに生じた維持費(相続財産に関する費用)は、その相続人が全部負担していることが多いように思います。

ですので、遺産分割協議や遺産分割調停では、遺産の分割内容だけでなく債務や経費の精算についても話し合います。

遺産分割審判における扱い

遺産分割調停でも相続人間で遺産分割の合意ができない場合、遺産分割調停から審判に移行することになり、審判官(裁判官)が分割の内容を決めることになります。しかしここで、相続にかかった経費・債務の取り扱いが困難になってきます。

なぜなら審判では、審判時に現存している遺産のうち、財産の分割のみが審判対象になります。ですので、相続にかかった経費・債務が宙に浮いてしまうケースが出てくるのです。

これは分かりにくいので事例で説明します。

【事例】

遺産は、不動産(空家)と預金3000万のみ

兄と弟の兄弟2人が相続人

相続当初から、葬儀代は遺産から支出することで兄弟は合意しました。しかし遺産の預金は凍結されてしまったので、取り急ぎ喪主を務める兄が自分のお金で支払うことにしました。また、遺産分割の話し合いをしている間、固定資産税は弟が代表して支払ってきました。

不動産を兄が取得することについては合意できたのですが、その不動産をいくらと評価し、預金をいくらずつ分けるかについて、兄弟で話がつきませんでした。そして遺産分割調停でも合意できず、審判になりました。

審判では不動産は兄、預金は大半が弟、一部が兄に分けられ、それぞれが取得した財産は均等になりました。

しかし、兄が立替えた葬儀代、弟が立替えた固定資産税は審判では精算されず、あらためて兄弟で話し合わなければなりませんでした。

弁護士に相談を

このように、審判においては相続の経費を必ずしも実情に応じて精算してくれるわけではありません。これは、法律上審判の対象となる遺産の範囲が限定されており、審判に先立つ遺産分割調停のときのように、柔軟な解決ができないからです。

ですので、審判において相続にかかった経費の分担を求められなくなる事態に備え、遺産分割交渉や調停の段階においてある程度相続にかかった経費の精算を済ませておいた方がよいケースもあるでしょう。

そのあたりの判断は、審判までの流れを念頭に置いて考えられる弁護士であれば可能です。多額の立替金、経費を負担している方は、弁護士に相談することをご検討ください。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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