
相続における使用貸借と賃貸借の違い│トラブル事例と対処法を解説
使用貸借の相続にお悩みの方は必見。この記事では使用貸借契約とは何か、土地や建物の無償貸借が相続に与える影響を解説。実は親が建てた家での使用貸借は相続時に複雑な問題を生みます。この記事を読めば使用貸借の相続について正しく理解できます。
親との使用貸借の相続では以下のような疑問を抱えている方も多いでしょう。
・使用貸借契約は相続の対象になるのか
・親が亡くなった場合、土地の使用権はどうなるのか
・兄弟間で使用貸借を巡るトラブルが発生しないか
使用貸借契約の相続は、賃貸借契約とは大きく異なります。使用貸借は無償契約であり、相続時の取り扱いが法律で明確に定められているからです。特に親子間での土地の使用貸借では、相続開始と同時に契約が終了する可能性が高くなります。
この記事では使用貸借契約の相続における特徴や、賃貸借契約との違い、トラブル事例と対処法について解説します。この記事を読むと使用貸借の相続の仕組みを正確に理解でき、将来発生し得る問題を事前に回避する方法が分かるでしょう。
使用貸借契約は原則として相続されず、契約当事者の死亡により終了します。一方で例外的なケースもあるため、専門家への相談が必要です。
目次
使用貸借と賃貸借の違い
物を貸し借りするための法律関係は、「使用貸借」と「賃貸借」に分かれます。
「使用貸借」というのは、無償での貸し借りをいいます。イメージしやすい例で言えば、友人から本などをタダで借りるような場合です。
一方、「賃貸借」とはレンタルDVDなどのように、賃料をやり取りして貸し借りすることをいいます。
使用貸借と賃貸借の違いは、「賃料(対価)」があるかないかです。 貸主や借主が亡くなった場合、使用貸借と賃貸借では差が出てくるのでしょうか。不動産を借りていた場面で考えてみましょう。
使用賃借での相続について
使用貸借の相続における法的取り扱いは、賃貸借契約とは根本的に異なります。使用貸借契約は無償で物を貸し借りする契約であり、当事者間の強い信頼関係に基づいて成立するためです。このため相続が発生した際の権利承継については、制限が設けられています。
民法では使用貸借契約の相続に関して明確な規定があり、借主と貸主のどちらが死亡するかによって異なる結果となるのが特徴です。
借主の死亡
使用貸借契約では、借主は、契約や目的物の用法に従って、借りた物を無償で使用収益することができます。目的物を利用するために通常必要になる費用(修繕費など)は、借主が負担します。
使用貸借契約は、貸主は、自分の財産を無償で借り主に使用させることになります。自分の所有物を他人にタダで貸すのですから、それなりの信頼関係がないと成り立たない契約です。そのため、使用貸借は、貸主・借主間の個人的な人間関係・信頼関係に基づく契約であると一般的には説明されています。
借主は貸主との特別な信頼関係があるからこそ、無償で目的物を借りる権利を取得できたのであり、貸主と借主の相続人との間に同程度の信頼関係があるとは限りません。
そのため、借主の死亡によって使用貸借契約は終了すると定められています(民法599条)。使用貸借契約は、相続されないのです。
もっとも、借主の相続人も、借主本人と同程度に貸主と信頼関係を築いているケースは少なくありません。貸主と借主が家族ぐるみで長年仲良くしてきたケースなどでは、借主の人間関係・信頼関係がその相続人にも承継されるものとして、使用貸借が相続の対象となったり、貸主と借主の相続人との間で新たな使用貸借契約が発生すると、裁判で判断されることもあります。
貸主の死亡
貸主が亡くなった場合には、使用貸借契約は終了せず、貸主の義務は相続人に引き継がれます。つまり、借主は、契約を解除されない限り、物を借り続けることができます。
賃貸借契約での相続について
賃貸借契約における相続は、使用貸借の相続とは大きく異なる特徴を持ちます。賃貸借は有償契約であり、当事者の死亡によって契約が自動的に終了することはありません。
借主または貸主が亡くなった場合、権利義務は相続人に承継されるのが原則です。賃貸借契約が財産的価値を有する契約として、法的に保護されているためです。
借主が死亡した場合
賃貸借契約は、使用貸借契約と異なり、相続の対象(相続財産)となります。そのため、借主が死亡した場合、相続人全員が借主としての権利義務を分割して承継します。
つまり、相続人は、賃料支払義務を相続することになります。借主の賃料を支払うという義務は、現実に不動産を使用していなくとも果たすことができるからです。
借主であった被相続人が一人暮らしをしていた場合には、相続人は誰も賃借不動産の利用を望まないでしょうから、賃貸借契約を解除したい場合が多いと思われます。この場合には、賃料支払義務を発生させないためにも、賃貸借契約は早めに解約すべきです。
なお、相続人が不動産の使用を継続する場合は、賃借権を相続したといっても新たな契約を結び直すことが必要です。
貸主が死亡した場合
貸主が死亡した場合、賃貸人の地位は相続人に承継されます。 相続人が複数いる場合には、その不動産を相続した相続人が賃貸人としての地位を承継します。
遺産分割協議前で、どの相続人がその不動産を引き継ぐかが決まっていない場合は、原則的には全員が貸主となり、受け取る賃料は相続人全員がそれぞれの法定相続分に従って取得します。 相続人が新たな貸主になることについて、借主の同意などは不要です。
また、法律上は、敷金も含め、従前の条件のまま賃貸借契約が引き継がれるので、賃貸借契約書を新たに作成する必要はありません。もっとも、新たに当事者となる者全員で、契約内容を確認して、署名捺印した賃貸借契約書を作成することが、トラブル防止の観点からは望ましいでしょう。
貸主交代後、借主は、新しい貸主に賃料を支払うことになります。口座名義人の死亡が確認されると預貯金口座は凍結されますので、賃料の支払いを被相続人名義の預金口座に振り込んでいた場合には、速やかに口座変更の手続きをとりましょう。
使用貸借契約での相続税について
使用貸借契約は、タダで目的物を利用できる分、権利としての保護が弱く、借主の立場はきわめて弱いものです。このことから、土地が使用貸借されていた場合の土地の評価は、原則として更地評価(100%評価)です。 子が親から土地を無償で借りて子ども名義で家を建てたとしても、更地評価がされます。 更地評価によって土地の相続税評価額等が上がり、相続税が高くなる場合があるので注意が必要です。
使用貸借でのトラブル事例と対処法
使用貸借は親族間など親しい関係で行われることが多く、かえってトラブルに発展しやすい側面があります。相続が発生すると、それまであいまいだった取り決めが顕在化し、深刻な対立を生む場合も少なくありません。ここでは、よくあるトラブル事例と対処法を紹介します。
貸主の相続人が使用貸借を終了したいと申し出る
親の土地に家を建てて住んでいた場合、使用貸借の相続により貸主の地位が兄弟などに移ることがあります。新しい貸主となった相続人から「土地を返してほしい」と要求されるケースは多いです。
使用貸借は当事者間の信頼関係に基づく無償契約で、貸主の死亡により新たな相続関係が生まれると、従来と同様の関係性が保てないからです。法的には相続人が契約終了を求めることは正当な権利行使となります。
トラブルを防ぐためには、契約締結時に明確な取り決めをしておくことが重要です。契約書の中に期間や使用目的を明記し、相続時の取り扱いについても規定しておきましょう。定期的な家族会議では将来の相続について話し合うことも効果的です。
借主が無断で家族を建物に居住させる
借主が勝手に家族を建物に居住させることは、信頼関係に基づく使用貸借契約の根本を崩します。時として、期間が長引くと借主は土地や建物を独占し、他人を勝手に住まわせてしまう恐れがあります。借主が所有者の許可なく、自身の息子夫婦を建物に住まわせるような事例です。
問題を未然に防ぐためには、使用目的を明確に示すことが重要です。契約締結時に、「世話になった親戚の叔母さんの居住用」と具体的に記載しましょう。これにより、叔母さんが不測の事態で他人を住まわせた場合などに契約を解消できます。
将来的な相続トラブルを避けるためにも、使用貸借契約は文書化し、使用目的や期間などを明確に定めることが重要です。
借主が貸した建物を無断でリフォームする
借主が貸主の承諾を得ずに無断で建物をリフォームすることが、トラブルの原因になりやすいです。原則として、借主は契約終了時に建物や土地を原状回復し、貸主へ明け渡す義務があります。勝手にリフォームした部分は、返却時に元の状態へ戻す必要があるため、契約違反が指摘されやすくなります。
使用貸借契約は口頭のみで締結されることも多く、双方の認識の違いから紛争に発展しがちです。特に貸主や借主が亡くなり、相続人の間で争いが起こるケースも少なくありません。こうしたリスクを防ぐためにも、リフォームの可否や工事内容、原状回復義務などを必ず契約書で明文化しておきましょう。
書面による確認が後々相続人を含めたトラブルを回避するポイントです。
まとめ│使用貸借と賃貸借の場合の相続
使用貸借と賃貸借の場合の相続についてご理解いただけたでしょうか。
「無償」か否かが使用貸借と賃貸借をわけるポイントと説明しましたが、無償というのは純粋に0円のことではなく、わずかな対価が支払われているに過ぎない場合は、賃貸借ではなく使用貸借と評価される場合があります。
親子での土地の貸し借りなどは、相続の際の税金の問題もからみますので、一度、弁護士までご相談ください。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。