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自分で相続財産を調査する方法

このページでは、税理士や弁護士などの専門家に依頼する前に、自分が相続人として相続財産を調べる方法について解説します。

専門家に任せきってしまってもよいのですが、ある程度自分で調べておけば専門家に相談する際も話が早く進みますし、費用の節約にもなりますので、可能であればご自分で調査されることをお勧めします。

以下ではどうやって調査すべきか、不動産、預金などの類型ごとに概説していきます。

1.総論

相続財産を調べたいときに、まずどこから調査を始めるでしょうか。

当然ですが、被相続人の自宅からです。人は重要な財産・書類を、自宅に保管してあるのが普通です。

不動産の権利書・売買契約書
実印
預金通帳、銀行印
年金手帳・年金証書
生命保険証書

などは、どこのお宅でも一定の場所にまとめて保管されていると思います(例えばタンスの特定の場所など)。

ですのでまずは、ここを調べるところからスタートします。

また、自宅に届く手紙やハガキは、被相続人がどのような財産をもっていたかを推測する重要な手掛かりになります。

銀行・証券会社などに資産を預けている場合、定期的に報告書類が自宅に届くことになっていますし、税金の納付書や督促状も自宅に届きます。

これによって、財産や債務の存在が明らかになります。

もちろん、被相続人自身が作成した、財産の一覧を記載したメモや覚え書きが見つかることもあります。ですので、相続財産を調査するなら、まずは自宅を探すのが鉄則です。

自宅に立ち入れない場合はどうなるか?

では、他の相続人(特に被相続人と同居していた相続人)と対立しており、自宅に立ち入れない、調査などもってのほか、という場合はどうすればよいでしょうか?

そういう場合でも、手間がかかるだけで大抵の財産は判明します。以下で個別に解説します。

調査に先立ち法定相続情報一覧図の作成を

個人情報保護の観点から、本人の財産は本人以外には開示されないのが普通です。

しかし、本人が死亡すれば、その相続人は本人の財産を調査できます。

この被相続人の財産調査は相続人であれば単独で行うことができ、相続人全員で行う必要はありません。

しかし、相続財産の調査先に毎回、戸籍謄本を提出して自分が相続人であることを証明するのは面倒ですし、戸籍謄本が1セットしかなければ相続財産調査も1つが終わってまた一つと、順番にするしかありません。

そこで、まずは戸籍をそろえて法務局で法定相続情報一覧図の作成を申請し、この一覧図を財産調査をかける予定の数だけ複数枚、先に取得しておくことをお勧めします。

2.不動産の調査方法

不動産はまず固定資産税納付書から

相続財産となる不動産の調査は、被相続人宛に届いた固定資産税納付書をみるのが最も簡単です。

固定資産税納付書は毎年4月から5月にかけて、不動産の所在する自治体からその所有者宛に送られてきます。1年を4期に分けて、固定資産税(と都市計画税)を納付するための納付書です。

納付書には、課税明細書がついています。課税明細書には、発行した自治体の区域内にある被相続人所有の不動産が、すべて記載されています。

ですので、被相続人がどのような不動産を所有しているかは、課税明細書を確認することで分かります。登記されていない建物も、課税されている限り課税明細書には記載されます。

ただし、課税明細書には固定資産税の免税点以下の不動産は記載されませんので、側溝などのわずかな価値しかない土地は所有していても課税明細書から漏れる可能性はありますので、注意が必要です。

登記事項証明書を確認する

固定資産税納付書(課税明細書)をなくした、または見せてもらえないケースでは、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。

登記事項証明書は、法務局に出向いて取得する方法のほか、オンラインで請求する方法もあります。内容を確認するだけであれば、登記事項証明書を取得しなくとも登記情報提供サービス(有料)を使ってパソコンの画面で確認し、これをプリントアウトするやり方もあります。

登記は広く公開されているものですので、登記事項証明書は、相続人でなくても誰でも見ることができます。

ただし、登記事項証明書を取得するためには、所在地(地番)が判明している必要があります。所在地(地番)は住所とは異なるので、分からないと登記事項証明書の取得に手間取ります。とはいえ、最近は不動産に関するデータもオープンデータになりつつあるので、実際上の所在地(住所)が分かっていればそれと照らし合わせて所在地(地番)を割り出すのはそう難しくありません。

マップル法務局地図ビューア

固定資産税課税台帳(名寄帳)

自宅などの不動産は、以上で問題なく判明します。

しかし、「被相続人が遠方のどこかに不動産を持っていると言っていたがちゃんと聞いていなかった。どこにあるか今となっては分からない」という場合もあると思います。

こういう場合は、被相続人の不動産がありそうな市町村で、固定資産税課税台帳の閲覧交付申請を行います。

もしそこに被相続人の不動産があれば、台帳の写しを取得でき、それにより不動産の概要がわかります。

固定資産税は市町村ごとに管理しているので、可能性のある市町村に対し個別に申請しなければなりません。

大抵は以下の3パターンの地域に所有していることが多いので参考にしてください。

①被相続人の出身地・本籍地
②過去に被相続人が居住、営農、就業していた地域
③被相続人がよく遊びに出かけていた地域(別荘・リゾートマンション等)

3.預貯金の調査方法

預貯金は、被相続人の自宅にある通帳から口座を保有する金融機関が判明すると思います。

また、口座を保有する金融機関からは定期的にハガキ等が届くので、それによっても分かります。

しかし、通帳もハガキも行方不明、あるいは見せてもらえないので何もわからないという場合は、被相続人が口座を保有していた可能性のある金融機関をしらみつぶしに当たるしかありません。

とはいえ当てずっぽうに調査をかけても効率的ではないので、以下の①から⑦の順番に検討してみてください。

①年金の入金指定口座
②ゆうちょ銀行(高齢者は大抵ゆうちょ銀行の口座があります。)
③住宅ローン等の借り入れをしたことがある金融機関(自宅の登記簿からわかります)
④配偶者が口座を保有する金融機関
⑤自宅から最も近くに支店がある銀行・信用金庫
⑥地域で最大手の地銀・信用金庫
⑦昔の勤務先の給与振込指定金融機関

金融機関に対して何を調査するか

相続開始時の預金残高が相続財産になるわけですから、相続開始日の残高証明書を取得するのは最低限必要です。

しかし、残高証明書は相続開始日の残高という1点しか分かりません。せっかく調査をかけるのであれば、口座の入出金履歴を取得することをお勧めします。

入出金履歴をみれば被相続人がどこから入金を受けていたか(株の配当など)、どんな引落があったか(生命保険料など)も確認できるので、その先の相続財産調査の手掛かりになります。

他の相続人が生前から被相続人の預金を管理していて、その管理が適切か疑われるとか、他の相続人への生前贈与の額が知りたいなどの事情がある場合、できる限り長期(最大10年)の入出金履歴を取り寄せたいところです。

ただし、入出金履歴の発行手数料は、ここ最近複数の金融機関で値上げされる傾向にあります(1か月あたり500円など)。ですので、費用との兼ね合いで履歴取得期間を決めればよいかと思います。

調査・照会する場合の注意点

金融機関に対し、被相続人の預貯金を相続人の立場で調査照会するということは、すなわち被相続人の死亡を金融機関に届け出ることになります。したがって、その時点で被相続人の口座は凍結されます。

被相続人が亡くなっても、同居の親族が引き続き自宅に住み続ける場合はよくあると思います。
ここで光熱費の引落し口座を被相続人の口座にしていると、凍結されて引落しが止まってしまいます。止めてはいけない引落しがある場合は、事前にその変更手続を終えてから調査するように注意しましょう。

4.株式その他の有価証券・金融商品

株式その他の金融商品については、まず被相続人の自宅に届いた銀行、証券会社、あるいは信託銀行の証券代行部からの封書を確認します。

近年は銀行がさかんに投資信託等の金融商品を販売しているので、銀行に残高証明書を発行してもらうとこれらの金融商品が預金と一緒に挙がってくることがあります。

また,被相続人が証券会社を通じて投資していた場合、証券会社は定期的に報告書を送ってきているはずです。これが見つかれば、当該証券会社に保有資産の残高証明書を発行してもらいましょう。

ほふり(証券保管振替機構)

株式を保有していたことは明らかなのに、取引していた証券会社が見つからない場合、ほふり(証券保管振替機構)に対して登録済加入者情報の開示請求をします。

この開示請求は相続人であれば行うことができ、被相続人と取引のあった証券会社・信託銀行の一覧が開示されます。

ここで注意すべきは、ほふりの調査は対象者の住所・氏名・生年月日で検索し、該当した結果のみ通知書で送付していることです。

生年月日は変わらないでしょうが、氏名・住所は証券会社に口座を開設して以降に変わっている可能性があります。もし現在の氏名・現住所だけで照会をかけると、開示される情報が洩れる可能性があります。

ですので、ほふりに調査をかける際は、前提として被相続人の住所(場合によっては氏名)の履歴を戸籍の附票などで追っておいて、開示の請求の際には被相続人の過去の住所・氏名をすべて記載する必要があります。

株主名簿管理人(信託銀行証券代行部)

証券会社の証券口座が見つかっても、株式や投資信託などの遺産は証券口座に登録されているものだけとは限りません。

証券会社の口座に登録されている株式や投資信託などは、当然ですがその証券会社を通じて購入したものだけです。たまにですが、株式を証券会社を通じずに購入したり、証券会社の登録をしていない株式を保有している場合があります。

その場合、株式を発行している会社の株主名簿管理人をしている信託銀行が、「特別口座」を開設してそこで管理しています。

また、証券会社を通じて株式を保有している場合でも、①端株・単元未満株、②未受領配当金、の2つの調査のためには、証券会社以外にも各株式銘柄の株主名簿管理人(信託銀行証券代行部)に照会をかける必要があります。

単元未満株(端株)

単元株とは、銘柄ごとに決められる最低限の取引株数(1単元)の株をいい、1単元未満の株数しかない株式を単元未満株といいます。要するに端数の株です。

証券会社の残高証明書には、単元未満株は記載されません。これを調べるにはその株式銘柄の株主名簿管理人である信託銀行証券代行部に照会するしかありません。

未受領配当金について

株式等を保有していると配当金が生じます。この配当金は、被相続人が指定していれば指定された銀行口座あるいは証券口座に入金されています。

もし被相続人がこのような入金先の指定をしていなければ、保有する株式の株主名簿管理人(信託銀行証券代行部)から株主名簿上の住所宛に配当金領収証が送られています。

「第○○期配当金領収証」というタイトルで、金額の記載のあるチケットのような外観のものが配当金領収証です。
これはゆうちょ銀行で引換換金(=配当の受領)できますが、引換期限が切れていても株主名簿管理人に提出すれば換金できます。

この引換換金を放置している被相続人はなぜか非常に多いですので、この配当金領収証が見つかっても見つからなくても、いちど株主名簿管理人に照会するのがよいかもしれません。

5.保険の調査方法

生命保険・医療保険・損害保険などの保険についても、調査の出発点は自宅に保管された保険証券などの資料、または自宅に届くハガキなどです。

それに加えて、前述の預貯金の入出金履歴を確認すれば、保険料が引き落とされていたり保険金が入金されていたりすることがありますので、それを手掛かりに契約内容を調査することができます。

生命保険

生命保険は、死亡時にまとまった死亡保険金が生じるようになっている契約が多いですので、すべての保険会社に照会をかけたいところです。

そこで生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用します。この照会制度は、協会加入の全社に対して一括で生命保険契約の存否の照会をかけられるので便利です。

なお生命保険協会は、日本で営業している生命保険会社すべてが加入しています。

ただし1件3000円の手数料がかかるのと、照会日以前に解約されてしまった契約に関しては回答を得られないのが難点です。

医療保険

最後は病院で亡くなる方がほとんどだと思いますが、被相続人を被保険者とする医療保険に加入していれば、相続財産に保険金(入院給付金等)が含まれる可能性があります。

こちらも保険証券を確保することが前提ですが、確保できない場合、「医療保障保険契約内容登録制度に基づく開示請求」を使って開示を受けることができます。

開示の請求先は、前述の生命保険協会です。

損害保険

一般的に損害保険は、掛け捨て型の場合がほとんどであることから、相続手続において損害保険の契約の有無を調査する必要はそこまで高くありません。

ただし損害保険の保険事故により相続が開始することになった場合、受取人が相続人になっていれば保険金を受け取ることができます。

また、建物更生共済(建更)のように、積み立て型の損害保険もあります。建物更生共済は何十年と積み立てることにより、相続開始時には数百万円になっていることもあります。

建更はJA共済が販売しているものであり、被相続人が農業を営んでいた、あるいはJAと何らかの付き合いが会ったという場合には自宅に建更が掛けられていなかったか、確認してもよいかもしれません。

6.債務の調査方法

相続財産は積極財産(プラスの財産)もあれば、消極財産(マイナスの財産)もあります。

マイナスの財産とは要するに債務、負債です。

この負債の調査は、特に相続放棄を検討する際には重要になりますので、別項で解説します。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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