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相続財産を調べたら実家が他人名義!どう処理すべき?

相続の場ではさまざまなトラブルが発生しますが、中でも財産の「名義」が実態と違うことに起因するトラブルがよくあります。特に、てっきり被相続人の名義と思っていた実家の不動産が、実は被相続人以外の名義だったという話は珍しくありません。

そこで、実家が被相続人名義でなかったときにはどういう問題が発生するのか、そしてその対処方法を整理してみます。

不動産の所有者はどうやって判断する?

そもそも、不動産の所有者はどうやって判断されるでしょうか。

知っている方には当たり前の知識ですが、不動産の所有者は、基本的に不動産登記事項証明書(登記簿)によって判断されます。

自分でお金を出して建築していても、長年にわたる居住の実態があっても、それだけでは所有者としては認められません。

持ち家だと思っていた実家が、担保にとられた結果他人の名義になっていたり、建物は被相続人の名義だが、土地部分が他人名義であったりするケースもあります。

実家が他人名義だった場合に生じる問題点

実家が被相続人以外の名義になっている場合の、問題点を整理してみます。

問題点1.遺産に含まれるかどうか争いになる

不動産は登記により、その所有者が世間一般に公示されています。

もし、実家の登記上の名義人が相続人の誰か(例えば他の兄弟)である場合、遺産分割協議の対象に実家を含めようとすると、その相続人から異議が出る可能性があります。

つまり、その実家は自分の財産だからそれについては遺産分割はしない、と話し合いを拒絶されるおそれがあります。そうなると、遺産分割協議の前に、そもそも被相続人の遺産の範囲がどこまでかを確定させなければ話が進まなくなります。

遺産分割協議が出来なければ、普通は家庭裁判所の遺産分割調停に進みますが、遺産の範囲の問題は家庭裁判所の調停でも解決できませんので、地方裁判所で遺産確認訴訟をする必要があります。

問題点2.自分が住んでいる場合に退去を求められる

被相続人と一緒に自分も実家に住んでいる場合、被相続人の死亡をきっかけとして、名義人から退去を求められる可能性があります。実家に住むことを許していたのは被相続人であって、その他の人間が住むことは許容していない、と実家の名義人から言われるのです。

これが被相続人名義の不動産であれば、相続人である配偶者には配偶者居住権があり、また使用貸借契約に関する意思解釈により、実態に応じて柔軟に解決することが判例でもある程度認められています。

しかし、他人名義の不動産で、かつ賃貸権といった強力な権利が成立しない場合は、退去を求められると対応が難しくなります。

問題点3.売却(現金化)が困難になる

実家(不動産)を相続して、それを現金資産に変えようという方は少なくありません。しかし、実家が登記上他人の名義になっていると、売却はできません。少なくとも、登記名義人の協力がなければできません。

まず実家を処分することについて名義人に了解してもらい、名義人に印鑑証明書や実印を用意してもらうなどの協力を求める必要があります。

名義人が親族であれば了解と協力はまだ得やすいでしょうが、もし赤の他人名義であれば、不動産を現金に代えるのは非常に難しいといえるでしょう。

問題点4.ローンが組めない

住宅ローンの担保は本人名義であることが原則なので、他人名義の不動産はあらたな住宅ローンの担保として使用できません。ただし、こちらも売却と同様に、所有者(名義人)の同意を得られれば担保として設定できます。

しかし、名義人が聞いたこともない赤の他人であれば、同意を取り付けることは事実上不可能といえるでしょう。

このように、実家の不動産が他人名義になっていると、遺産として自由に利用・処分することが難しくなります。

このような場合に備えて、所有の実態と形式(登記など)を早いうちに一致させておくことが重要であると言えます。

実家が他人名義だった場合の対処方法

では、実家が他人名義だった場合、実際にどのように対応すべきでしょうか。

これには2パターンありますので、分けて考えます。

1.数次相続パターン

実際に最も多いのが、実家が被相続人の親や祖父母など先代の名義のまま、というパターンです。

このパターンは、先代が亡くなった時に相続の話はできていたが、相続登記を怠っていたのが原因です。

この場合、まずは先代の相続人となる自分の親族全員に、実家の名義変更の手続が必要な旨を伝えましょう。

このパターンでは、親族は実家に被相続人が住んでいたことをよく知っていて、特に紛糾することなく協力を得られることがほとんどです。

ただし、名義を変更するためには、先代の相続人全員の協力が必要になります。被相続人の兄弟が多く、疎遠な親族がいる場合、先代の相続人全員に連絡を取るだけでも数か月かかる可能性もあります。

2.他人名義パターン

数としては少ないですが、実家の名義人が全くの他人であったパターンです。

そんなことがあり得るのか?と思われるかもしれませんが、郊外の古くからある集落などでは、昔のおおらかな測量・登記がそのまま修正されずに現代まで続いており、改めて調べてみて初めて権利実態と違うことが発覚することもあるのです。

私の経験では、さんざん調べた結果、どう考えても権利者が不自然なので法務局に問い合わせたところ、自作農創設特別措置法(農地改革)による登記が間違っていたことが発覚したケースがありました。

こういった、登記自体が誤っていた場合は別として、他人が実家の真の権利者であった場合は、以下のように対処します。

まずは名義変更の協力を求める

このように全くの他人が名義人になっている場合、まずはその名義人(たいてい亡くなっており、その相続人)に対して連絡をとって、自分に登記名義を変更してくれるよう求めます。

名義人の相続人が承諾してくれる限り、譲渡を受けることができます。

名義人の相続人もそのような不動産の所有者になっていたことを知らないのが普通ですので、すんなり無償あるいは少額の対価で譲ってくれることも多いです。

ただし、名義人の相続人全員の承諾を取らないといけませんので、骨が折れる点は変わりません。

時効取得が成立するか検討する

並行して、不動産の時効取得を検討すべきです。

他人名義の不動産を10年から20年占有し続けている場合には、「時効取得」が成立する可能性が高いです。これについては、民法の162条に規定があります。

第162条 (所有権の取得時効)

1 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

簡単に言うと、他人名義のままであっても、自分が所有するつもり(所有者のつもり)で使用し続けたまま10年から20年たつと、時効が成立して自分のものになるということです。

実家が他人名義であることを被相続人自身が知らなかったというケースは少なく、何らかの事情で自分に権利があると考えていた(=所有の意思がある)ケースが多いです。

したがって相続人も、被相続人が長年占有してきたことを理由として、時効取得により所有権を自己に移すよう名義人に請求できる可能性があります。

任意の協力が得られなければ訴訟による取得

取得時効が成立する場合でも、名義人の相続人が多数の場合、全員が協力してくれるとは限りませんし、認知症などの理由で一部の相続人に協力を求めることが不可能な場合も考えられます。

そのような場合、名義人の相続人全員を被告として、訴訟によって登記名義を取得することを視野に入れましょう。

取得時効の成立によって自分が実家の所有権を取得すれば、登記名義人(の相続人全員)に対する移転登記請求権が発生します。

この移転登記請求権を判決で認めてもらうことで、名義人の相続人の承諾がなくても自己名義で登記することができるようになります。

弁護士に相談を

現実には、名義人の相続人の一部から協力を得られず交渉が難航し、最終的には訴訟と判決によって名義変更せざるを得ないケースがよくあります。

こういった手続は、法律の知識を持ち、相続の問題に強い弁護士でなくては処理できません。名義人の相続人の特定調査からはじまり、取得時効成立の可能性検討、交渉や訴訟の判断、証拠の収集・書類の作成などが必要になるからです。

実家が実は他人名義だった、しかし被相続人は長年住んでいたし、名義を取得できなければ困るという場合には、すぐに弁護士に相談しましょう。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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