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Q:亡くなった父が生前に3000万円で買った不動産を、私を含めた相続人で分割することになりました。私が懇意にしている不動産会社に査定を依頼したところ、3800万の価格がつきましたが、弟が依頼した不動産鑑定士による査定価格は3600万円だったそうです。この場合、どちらの価格をもとに遺産分割を行えばいいのでしょうか?
複数の業者に査定を依頼して異なる査定価格が出てしまったとき、本当に正しい価格がわからくなってしまうと遺産分割協議のときに混乱を招きかねません。ここでは、不動産を遺産分割するとき、どのような方法で評価するべきかご紹介します。
不動産の評価を決めるには次の4つの方法があります。
不動産会社による簡易査定は無料で行っているところが多く、実務上ではこの方法がよく用いられています。不動産会社は、日常的な業務で不動産を取り扱っており、不動産価格に関して詳しく知っていますから、合理的な評価方法ともいえるでしょう。ただし、不動産会社が評価した金額は、あくまで「対象不動産を売却したときの価格」になるため、他の方法による査定より高額になる傾向にあります。
不動産鑑定士による査定は、他のどの評価方法よりも客観性が高く、相続人間で不公平が生じない方法です。ただし、不動産鑑定士による鑑定を依頼すると査定価格がわかるまでに1~2ヶ月ほどかかる上に、数十万円の費用も発生します。
自治体が固定資産税を課税するために3年ごとに定める価格で、固定資産税の納付書または固定資産評価証明書に評価額が記載されています。
国土交通省が毎年1月1日に発表する地価公示価格の7割程度の価格が不動産の評価額とされており、国が認めた客観的な評価額といえるため、この評価額から取引価格の算出ができます。
国税局が定めた路線価等を基礎に相続税や贈与税の課税を目的として算出された価格のことです。地価公示価格の8割程度の価格が不動産の評価額とされているため、この評価額から取引価格の算出ができます。
不動産価格の評価の仕方には法律上の決まりはなく、相続人間で合意があればどの評価方法でも問題ありません。しかし、相続人間で不動産の評価方法について合意が得られなかった場合は、不動産鑑定士による評価を優先することをおすすめします。
というのも、不動産会社は不動産に詳しいとはいえ、査定に関する資格やノウハウを持ち合わせているわけではないので、客観性・公平性に欠けることがあるためです。また、固定資産税評価額も相続税評価額もあくまで税額の算出のために用いられる評価額であって、不動産価格の算定を目的としているわけではありません。
不動産鑑定士は、不動産の専門家であり、他のどの評価方法よりも客観性・専門性が高い方法と言えます。ご質問をお寄せいただいたケースでは、不動産の評価方法について相続人同士で争いが生じているなら、弟さんが依頼した不動産鑑定士による評価額3600万円を不動産の評価として採用するべきでしょう。
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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