遺産分割協議をやり直したい | 神戸相続弁護士 福田法律事務所

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遺産分割協議をやり直したい

このページでは、遺産分割協議を一度行ったが、もう一度遺産分割協議をやり直したいというケースについて解説します。

そもそも無効となる遺産分割協議

まず、遺産分割協議をやり直すまでもなく、当初の遺産分割協議がそもそも無効で効力が生じていない場合があります。

その条件とは、以下のようなものです。

・相続人として協議に加わるべきだった人物を除外して協議していたとき
・相続人として協議に加わるべきではない人物を含めて協議していたとき

このような場合、たとえ遺産分割協議書が作成されていても何ら効力がありませんので、一から遺産分割協議をすることができます。

有効な遺産分割協議は原則としてやり直しできない

次に、有効な遺産分割協議が既に成立している場合です。

いちど遺産分割協議が有効に成立してしまうと、特段の理由がない限りやり直しができません。

後でやりなおしたいと思ったら簡単にやりなおせるとすると、協議書を作成する意味がなくなりますし、法的安定性がなくなるからです。

ただし、「相続人全員」がやり直しに合意した場合、新たに遺産分割協議をやり直すことは可能です。たとえ相続登記まで完了していても、その登記を抹消し、新たに作成した遺産分割協議書をもとにして登記することも可能です。

もっとも、一度でも有効になった遺産分割協議をやり直すときには、注意も必要です。それは「税負担」に関することです。

法律的に有効である遺産分割協議の結果をやり直して財産を配分しなおすということは、一度各相続人が相続して自分のものとした財産を、新たに他の相続人に譲渡もしくは贈与することと同じと判断されます。

したがって、やり直しによって所得税や贈与税が新たにかかってくる可能性があります。元々有効であった遺産分割協議をやり直すには、相応のコストが必要という事を覚えておきましょう。

有効な遺産分割協議のやり直しが可能なケースとは

では、他の相続人全員の了解が得られなくても、有効な遺産分割協議をひっくり返してもう一度協議をやり直せるケースはあるでしょうか。

そもそも、後から遺産分割協議をやり直したくなるケースには、

①詐欺や強迫によって、不本意な遺産分割協議書に署名押印してしまったケース
②遺産分割協議書をよく確認しないまま署名押印してしまったケース
③遺産分割協議の前提に錯誤があるケース

などが考えられます。 ここからは、この3つのケースについて解説します。

詐欺や強迫によって遺産分割協議書に押印してしまった場合

詐欺や強迫によって遺産分割協議書に押印してしまった場合、遺産分割協議を取り消すことができます(民法96条1項)。

「強迫」はあまり聞かない言葉ですが、脅迫と同義で考えればよいです。要するに騙されたり、脅されてした遺産分割は取り消しうるということです。

ただし、詐欺の場合に限っては、相続人間では遺産分割協議を取り消すことができても、詐欺があったことを知らなかった第三者に対しては、取消の主張できない場合があるので注意が必要です(民法96条3項)。

これに対し、強迫によって遺産分割協議書に押印してしまった場合は、その後に遺産を取得した人が現れても取消しを主張することができます。

これは、詐欺にあった人は、被害者であると同時に、強迫の場合に比べて詐欺を見抜けなかったという落度があるからと考えられています。

遺産分割協議書をよく確認しないまま署名押印してしまった場合

遺産分割協議書をよく確認しないまま押印してしまった場合、後になってそんなつもりではなかったと言いたくなるケースがあると思います。

例えば

・相続税の申告期限が迫っているからと急き立てられて、中身を見ずに慌てて押印してしまったケース
・まさか他の相続人に裏切られると思わず、よく確認せず押印してしまったケース

などです。

しかし、遺産分割協議書にある署名押印が自分のものである場合は、裁判でこの言い分を通すことは容易ではありません。

紛争の実態としてはよくある話だと思うのですが(これまでの経験でもこういう相談は多い)、こういう重要な書類に署名押印する以上は、内容を確認しないことはありえない、という経験則を裁判所は採用します。その経験則を裁判官が本気で信じているというよりも、そういうルールにしておかないと社会が回らないという配慮があるように思います。

したがって、遺産分割協議書の内容を確認していない、という言い分を正面から主張するのは得策ではありません。

そこで次項に述べるように、少し角度を変えて、署名押印に至った経緯に錯誤があると主張できないか検討していくことをお勧めします。

遺産分割協議の前提に錯誤がある場合

遺産分割協議書の前提を勘違いしていた場合、その理由によっては法律的には錯誤(民法95条)として取り扱われる可能性があります。

民法95条1項は、「意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる」と規定されています。

そして同項2号が「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」を掲げています。

これを遺産分割協議に当てはめると、遺産分割の前提となった重要な事情について真実を認識しないまま遺産分割協議書に押印してしまった場合には、民法95条の錯誤といえる余地があります。

例えば、預金はほとんど残っていないとの説明を受けて預金を取得しない遺産分割協議書に押印したのに、実は多額の預金が遺産として残されていた場合などです。

他の相続人の説明が嘘だった場合だけでなく、当初の遺産分割協議時には判明していなかった多額の財産が協議後に見つかる場合もあります。

こういった場合は錯誤による取消しを主張して、遺産分割協議のやり直しを求めていくこととなります。

追認に注意

もっとも、取消には追認といって、取り消しうることを知りながら遺産分割協議の内容を正当なものと認めてしまうと、後から遺産分割協議書の有効性を争えないことがあるため、注意を要します。

今回のケースで言えば、詐欺を受けたことを知りながら協議内容に従って手続きを進めてしまうケースなどです。これを追認といい、意思表示の取消しはできなくなります。

万が一、強迫されたり騙されたりして遺産分割協議書に押印してしまい、どのようにすればよいのかわからないと困っているといった場合には、まずは一度、遺産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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