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遺言に漏れていた遺産があった場合、その遺産をどう分けるのかについて相続人全員で遺産分割協議を行うのが原則となります。単に遺言書に記載漏れとなっている遺産があった場合でも、相続人全員の話し合いによってどのように分けるのかを話し合います。
遺言にすべての遺産が記載されていなかったとしても、遺言書は無効になることはありません。
遺言に漏れていた遺産があった場合は、
・遺言に記載されている遺産は、遺言書どおりに相続する遺産
・遺言に漏れていた遺産は、遺産分割協議で相続する遺産
となります。前者の遺産は遺言書どおりに相続することになり、後者の遺産は相続人全員でどのように分けるのかを決めることになります。
それでは遺言に漏れていた遺産があった場合の具体的な分割例を3つ挙げてみたいと思います。
1.遺言書と同じ割合で分割する
2.相続人の1人に相続する
3.遺産の内容に応じた割合で分割する
漏れていたのが預貯金といった容易に分割することができる遺産であれば、遺言書に書かれている割合に従って分割することができます。
自動車など分割することが容易ではない遺産だった場合は、相続人のうち誰か1人が相続する方法が考えられます。自動車のような物理的に分割できない遺産であっても、複数の相続人で共有名義とすることも可能ですが、売却するような場合は名義人全員で手続きする必要があるため、あまり現実的ではありません。
土地や建物のような遺産でれば、新たな割合を使って平等に分割して共有名義にすることで話がまとまることもあるでしょう。
相続開始後に発見される遺産があった場合に備えて、あらかじめ遺言書に記載しておくようにしましょう。たとえば、「その他一切の遺産を妻に相続させる」と記載すれば、記載漏れの遺産は妻が相続することになり、遺言書どおりに相続を執行することができるようになります。
遺留分を主張できる余地があれば、思わぬトラブルに発展することがあります。「その他一切の遺産を妻に相続させる」のように記載したとしても、遺留分といって他の相続人が相続できる権利を主張できる余地がなくなったわけではないからです。遺留分を考慮した内容を記載しておくことも、予防できる方法の1つといえるでしょう。
また、先ほど挙げた分割事例の方法では不平等だと主張する相続人がいる場合は、遺産分割協議が成立しないことになるため、家庭裁判所での遺産分割調停で話し合いをすることになります。
「その他一切の遺産を妻に相続させる」と遺言書に記載すれば、遺言に漏れている遺産すべてを1人の相続人に相続させることは不可能ではありません。ただし、遺留分を主張する相続人がいる場合は、遺産分割協議などで相続人全員が納得できる方法を話し合わなければならないのです。
もし、遺言に漏れていて触れられていない遺産がありどうしてよいかわからず困っている場合には、まずは一度、遺産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
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このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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