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行方不明の相続人がいる場合の遺産分割


 

連絡が取れない、反応がない相続人がいると、いつまでたっても手続を進められないため困ってしまいます。

このよう相続人がいる場合、どのような対応をすればいいのでしょうか。

この記事では、連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続はどうなるのか、どのように対処すべきかといった点についてご説明します。

 

連絡が取れない・行方不明の相続人がいる場合の遺産分割はどうなる?

遺産分割協議にもその先の相続手続にも、相続人全員の参加は必須です。

例えば銀行で相続預金を解約しようと思うと、戸籍類のほか、相続人全員が署名押印した遺産分割協議書あるいは銀行所定の書式、全員の印鑑証明書の提出を求められます。

また、遺産分割協議も、全員が参加したものでなければ有効なものとはみなされません。

したがって、誰か一人でも相続人が欠けると、相続手続ができないのです。

では、連絡が取れない相続人がいる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

これはその相続人の住所・居所が判明している場合と、判明していない場合に大きく分かれます。

 

住所・居所が判明している場合

もしその相続人の生活の本拠となる住居・居所が判明しているのに連絡が取れない場合、つまり電話に出ない、手紙やメールに返事がない、住居を訪ねても反応がないといった場合、考えられる理由は2つです。

1つは、他の相続人と話し合いをしたくない、関わり合いたくないという場合です。

もう1つは、関わり合う意思があっても関われない場合です。

例えば、高齢で寝たきりである、長期入院で自宅を空けているといったケースが考えられます。

前者の関わり合いを避けているケースは、遺産分割協議がまとまらないケースと同様に、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをする必要があります。

調停を申し立ててもその相続人は調停期日に出頭しないでしょうが、遺産分割調停では相続人の参加を欠いても最終的には審判(調停に代わる審判)によって、遺産分割を最終的に断行することができます。

後者の関わり合いたくても関われないケースは、高齢の方がほとんどだと思いますので、その配偶者や子供などにコンタクトをとり、そこから本人の現在の状況を確認するとともに、相続手続への協力を求めてみましょう。

本人の子供に事情を説明して協力が得られたケースでは、円滑に相続手続が進むことが多いです。

ただし、本人が認知症などで判断能力が失われているケースでは、いくら家族の協力が得られてもそのまま相続手続を進めることはできません。

その場合は、本人に成年後見の手続を利用してもらうしかないでしょう。

 

住所・居所が判明しない場合

戸籍附票の調査

まず、戸籍の附票をたどって、連絡がつかない相続人の現在の住民票登録がどこになっているのか確認しましょう。

ただ、戸籍に関する情報は個人情報になるため、被相続人が亡くなったことがわかる書類が必要です。

必要書類について問い合わせをしてから市区町村役場に行くとスムーズです。

 

不在者財産管理人

そして、住民票上の住所を訪ねても、そこに生活の本拠を置いていない場合もあります。

このような場合は、他の相続人から見て行方不明者といえますので、家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任申立てをします。

そして家庭裁判所が財産管財人を選任し、管財人が行方不明者の相続人の代わりに遺産分割協議に参加することになります。

ただし、財産管財人が遺産分割協議に応じるには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

ここで行方不明者に財産を残さないような遺産分割協議の内容にすると、よほど特殊な事情がない限り家庭裁判所は不在者財産管理人へ許可を出しません。

基本的に、行方不明者にも法定相続分に相当する財産を残す必要があります。

 

財産管理をし続けるのを避けたい場合の対処法

不在者財産管理人を選任して遺産分割をすると、不在者財産管理人は行方不明者が現れるまで財産を管理し続けなければならなくなるため、負担になってしまいます。

このようなときによく利用されるのが、帰来時弁済という遺産分割です。

帰来時弁済型の遺産分割をした場合、特定の相続人に行方不明者の相続分を預かってもらい、行方不明者には何も相続させない、という遺産分割が可能になります。

ただし、行方不明者が現れて請求をされた場合は、その人の相続分にあたる財産を支払う必要があります。

帰来時弁済型の遺産分割をする際は、不在者が帰来し請求をされた場合、相続人は〇〇万円を支払う、といった内容を協議書に追加する必要があります。

ただし、帰来時弁済型の遺産分割を利用できるのは、以下に当てはまるような場合です。

 

  • ・帰来の可能性が低い
  • ・行方不明者に子がいない
  • ・相続財産が高額でない

 

生死自体も不明な場合

連絡がつかない相続人が、他の相続人から見て長年生死自体が不明であることも少なくありません。

そのような場合は、失踪宣告を検討します。

連絡の取れない相続人が失踪宣告を受けると、相続人から除外されます。

失踪宣告を受けるには、行方不明者の住所地または居所地の家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをします。

申し立てをできるのは、法律上の利害関係がある人で、例えば配偶者、相続人、財産管理人などが該当します。

死亡宣告が認められるのは行方不明者の生死が7年以上明らかでない場合と、震災や船舶の沈没の被害に遭い、被害の後1年以上生死がわからない場合に限ります。

上記の期間に満たないような場合は、 在者財産管理人を選任することになるでしょう。

 

まとめ

この記事では、連絡がつかない相続人がいる場合の遺産分割について解説をしてきました。

まずは、その像族人の住所を確認し、親族を巻き込んで連絡を取れるよう試みてみましょう。

住所がわからない場合は、不在者財産管理人を選任する選択肢と、失踪宣告を受ける選択肢があります。

しかし、失踪宣告を受けるためには行方不明の期間が7年以上でなければならないので、不在者財産管理人を選任した方がスムーズかもしれません。 

また財産の管理が大変になりそうであれば、帰来時弁済型の遺産分割を検討してください。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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