相続における賃貸借と使用貸借の違い | 神戸相続弁護士 福田法律事務所

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相続における賃貸借と使用貸借の違い

1 はじめに

物を貸し借りするための法律関係は、「使用貸借」と「賃貸借」に分かれます。
「使用貸借」というのは、無償での貸し借りをいいます。イメージしやすい例で言えば、友人から本などをタダで借りるような場合です。
一方、「賃貸借」とはレンタルDVDなどのように、賃料をやり取りしての貸し借りすることをいいます。

使用貸借と賃貸借の違いは、「賃料(対価)」があるかないかです。 貸主や借主が亡くなった場合、使用貸借と賃貸借では差が出てくるのでしょうか。不動産を借りていた場面で考えてみましょう。

2 使用貸借について

(1)借主の死亡

使用貸借契約では、借主は、契約や目的物の用法に従って、借りた物を無償で使用収益することができます。目的物を利用するために通常必要になる費用(修繕費など)は、借主が負担します。

使用貸借契約は、貸主は、自分の財産を無償で借り主に使用させることになります。自分の所有物を他人にタダで貸すのですから、それなりの信頼関係がないと成り立たない契約です。そのため、使用貸借は、貸主・借主間の個人的な人間関係・信頼関係に基づく契約であると一般的には説明されています。
借主は貸主との特別な信頼関係があるからこそ、無償で目的物を借りる権利を取得できたのであり、貸主と借主の相続人との間に同程度の信頼関係があるとは限りません。

そのため、借主の死亡によって使用貸借契約は終了すると定められています(民法599条)。使用貸借契約は、相続されないのです。

もっとも、借主の相続人も、借主本人と同程度に貸主と信頼関係を築いているケースは少なくありません。貸主と借主が家族ぐるみで長年仲良くしてきたケースなどでは、借主の人間関係・信頼関係がその相続人にも承継されるものとして、使用貸借が相続の対象となったり、貸主と借主の相続人との間で新たな使用貸借契約が発生すると、裁判で判断されることもあります。

(2)貸主の死亡

貸主が亡くなった場合には、使用貸借契約は終了せず、貸主の義務は相続人に引き継がれます。つまり、借主は、契約を解除されない限り、物を借り続けることができます。

3 賃貸借契約について

(1)借主が死亡した場合

賃貸借契約は、使用貸借契約と異なり、相続の対象(相続財産)となります。そのため、借主が死亡した場合、相続人全員が借主としての権利義務を分割して承継します。
つまり、相続人は、賃料支払義務を相続することになります。借主の賃料を支払うという義務は、現実に不動産を使用していなくとも果たすことができるからです。

借主であった被相続人が一人暮らしをしていた場合には、相続人は誰も賃借不動産の利用を望まないでしょうから、賃貸借契約を解除したい場合が多いと思われます。この場合には、賃料支払義務を発生させないためにも、賃貸借契約は早めに解約すべきです。

なお、相続人が不動産の使用を継続する場合は、賃借権を相続したといっても新たな契約を結び直すことが必要です。

(2)貸主が死亡した場合

貸主が死亡した場合、賃貸人の地位は相続人に承継されます。 相続人が複数いる場合には、その不動産を相続した相続人が賃貸人としての地位を承継します。

遺産分割協議前で、どの相続人がその不動産を引き継ぐが決まっていない場合は、原則的には全員が貸主となり、受け取る賃料は相続人全員がそれぞれの法定相続分に従って取得します。 相続人が新たな貸主になることについて、借主の同意などは不要です。

また、法律上は、敷金も含め、従前の条件のまま賃貸借契約が引き継がれるので、賃貸借契約書を新たに作成する必要はありません。もっとも、新たに当事者となる者全員で、契約内容を確認して、署名捺印した賃貸借契約書を作成することが、トラブル防止の観点からは望ましいでしょう。

貸主交代後、借主は、新しい貸主に賃料を支払うことになります。口座名義人の死亡が確認されると預貯金口座は凍結されますので、賃料の支払いを被相続人名義の預金口座に振り込んでいた場合には、速やかに口座変更の手続をとりましょう。

4 相続税について

使用貸借契約は、タダで目的物を利用できる分、権利としての保護が弱く、借主の立場はきわめて弱いものです。このことから、土地が使用貸借されていた場合の土地の評価は、原則として更地評価(100%評価)です。 子が親から土地を無償で借りて子ども名義で家を建てたとしても、更地評価がされます。 更地評価によって相続税が高くなる場合があるので注意が必要です。

5 まとめ

使用貸借と賃貸借の場合の相続についてご理解いただけたでしょうか。

「無償」か否かが使用貸借と賃貸借をわけるポイントと説明しましたが、無償というのは純粋に0円のことではなく、わずかな対価が支払われているに過ぎない場合は、賃貸借ではなく使用貸借と評価される場合があります。

親子での土地の貸し借りなどは、相続の際の税金の問題もからみますので、一度、弁護士までご相談くださいね。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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