相続人が多くて手続が進められない | 神戸相続弁護士 福田法律事務所

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相続人が多くて手続が進められない

 

はじめに

相続が開始すると、遺産は原則として相続人間の共有状態になるので、相続の手続は相続人全員で分割協議を行ったのちにする必要があります。

しかし,相続人が多すぎて、手続きを進めることが困難な場合がしばしばあります。

例えば、相続開始から何十年と時間が経っており、相続開始時に相続人だった方が亡くなって相続人の相続人数名に権利が移り、さらに相続人の相続人の相続が発生し…と、どんどん人数が増えていって収拾がつかないケースなどです。

何十人もが一堂に会して話し合いをするのも現実的ではないですし、このような場合はどうすればよいでしょうか?

以下では、いくつかアイディアを示します。これらを採用可能かどうかは個々の状況によりますが、何かヒントになるかもしれません。

 

正攻法で相続人全員の署名・押印を集める

まず順番として、正攻法から考えます。全員に遺産分割案を示して、全員の同意を求めます。

しかし、これだけでは芸がありませんので、いくつかヒントを示します。

 

分割協議書ではなく分割協議「証明」書

遺産分割の合意ができたら、遺産分割協議書を作成するのがセオリーです。

このとき遺産分割協議書は、同じ書面に相続人全員で署名・押印してもらうのが普通です。

しかしそれでは、1つの書面を全相続人の間で持ち回りしなければなりません。

相続人が少なければそれでもよいですが、何十人もの相続人が全国に散らばっていると、1人に郵送して署名・押印してもらい、返却を受けて次の1人へ郵送と何十回も続けていくのは大変な作業になります。

また遺産分割協議書は実印で押印してもらい、一緒に印鑑証明書を添付してもらいますが、銀行などは発行から6か月以内の印鑑証明書の提示を求めますので、下手すると集めているうちに期限が切れるかもしれません。

そこで、遺産分割協議書ではなく、遺産分割協議「証明」書の形式にします。

遺産分割協議書と遺産分割協議「証明」書は、書かれている遺産分割の内容は同じで形式が違うだけです。

これを相続人全員の数だけ用意します。

各相続人が署名・押印する遺産分割協議「証明」書は、全く同じものです。

ただし1通に全員が署名・押印するのではなく、それぞれが1通にだけ署名・押印すればよいような形式になっています。

この遺産分割協議「証明」書を相続人全員分集めれば、遺産分割協議書と同じ意味を持ちます。

他の相続人の署名・押印を待つ必要がないので、同時並行で進めることができ、時間の短縮になります。

 

法定相続分による分割

これはケースによりますが、相続人が多数でほとんど相互に面識がないような相続では、相続人全員の署名・押印を円滑に集めるためには法定相続分による分割を提案することになるでしょう。

もし誰か1人の相続分を増やそうと思うと、なぜ相続分を増やすのかを説明しなければなりませんが、その説明を他の相続人全員が了解するとは限りません。

また、1人の相続分が増えると他全員の相続分が減るわけで、その意味でも他の相続人の同意を得ることが難しくなるからです。

ですので、一番誰でも納得しやすい遺産分割は、法定相続分による分割です。

どの相続にも個別の事情はあるものですが、相続人が多数いる遺産分割で相続人全員の了解をもらうためには、個別の事情は呑み込んで、法定相続分による分割を求めるのが得策であると思います。

 

なるべく現金払いで

相続人が多ければ多いほど、少ない相続分しかない相続人が多数出てきます。

たとえ遺産が1000万円あったとしても、相続分が72分の1の相続人だと13万8000円ほどの分け前にしかなりません。

これが100万円の遺産だと、わずか1万3800円になります。

そういった少しの相続分になる相続人に対しては、なるべく現金振り込みで、受け取るだけで終了するような遺産分割の方法を提案すると賛同が得やすいと思います。

これを株式での受け取りと対比して考えます。

1万3800円相当の株式を1株分けてもらえるとしても、そのためには証券会社に口座開設書類を提出し、住民票やら運転免許証・マイナンバーカードやらを提出し、口座を開設できて初めて相続による株式の移管を受けられるようになります。

こんな面倒な手続をしても少額しか得られない相続人は、「手続が面倒」というだけの理由で相続手続に協力しない可能性が出てきます。

取り分の少ない相続人ほど要注意、これは相続人多数の遺産分割の鉄則です。

 

正攻法のデメリット

正攻法のデメリットは、一人でも賛同が得られない相続人がいる場合、努力が水泡に帰すことです。

相続人が10人いるうち、9人が署名押印してくれたのに、1人が署名押印してくれないので進まないというのはよくある話です。

 

相続放棄

次に考えるのは、できるだけ関与する当事者(相続人)を減らすことです。

被相続人との関係性の薄い相続の場合、財産をもらうことは最初から想定していないので、正面から相続の放棄をお願いするとあっさり了承されることもあります。

相続放棄には期限がありますが、相続の開始と自分が相続人となる事を知ってたときから起算して3か月なので、何年前の相続であってもそれを知らなければ、知ってから相続放棄することは可能です。

とはいえ、相続放棄自体も家庭裁判所に書類を提出する必要があるわけですから、ある程度面倒なことではあります。

ここは、相続人として相続手続に参加することの面倒さとの、天秤にかけられることになるでしょう。

進めようとしている相続が当事者が多く、時間がかかる見込みを伝え、迷惑をかけないために早期離脱を促すというスタンスでお願いしてみるとよいかもしれません。

 

デメリット

相続放棄によって当事者を減らしていくアプローチのデメリットは、相続放棄の手続をとるかどうかは、結局のところ本人に任せるしかないというところです。

放棄します、と意思表明すればそれで事足りると思って思っている相続人も少なくなく、家庭裁判所に書類を出す必要があることを丁寧に説明して腰を上げてもらわなければなりません。

また、そうするのが当然であるかのように相続放棄を求める手紙を送ってしまい、余計にトラブルになったという話もよく聞きます。

相続放棄を要請するなら、その理由と説明は慎重に考えましょう。

 

遺産分割調停・審判

相続人が多く、意見もバラバラで収拾がつかない、といった相続は、もはや遺産分割調停・審判手続を利用して解決するしかないでしょう。

裁判所を利用するメリットは、一挙に解決を図れることですが、デメリットは時間と費用が掛かることです。

 

管轄をよく考える

遺産分割調停には、どこの家庭裁判所が取り扱うかという管轄の問題があるのですが、多数当事者の遺産分割調停では、たいてい複数の家庭裁判所に管轄が認められます。

管轄が複数あるときは、申立人がどの家庭裁判所に申し立てるかを選択できるのですが、これは他の相続人の数と影響力を見極めながら、慎重に選択した方がよいと思います。

というのは、遠方で遺産分割調停を申し立てられると、あまり熱心でない当事者は調停期日を欠席することが多く、他の相続人らが話し合って決めたことに従う、というスタンスになりがちだからです。

調停の管轄を選ぶことにより、意見しようと考える当事者が少なくなれば、結果的には早く話がまとまることになるでしょう。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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