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自筆証書遺言はどこまで有効か(判例)

自筆証書遺言の基本的なルールとは?

自筆証書遺言が有効であると認められる基本的なルールとして、民法第968条第1項にて定められている以下の4つの項目を満たす必要があります。

・全文(自書:遺言者自身が手書きすること)

・日付(自署)

・氏名(自署)

・押印

上記のうちどれか1つでも不足していると、原則としてその自筆証書遺言は無効です。今回は、自筆証書遺言に必要な項目の1つである押印に関する判例をご紹介していきます。

自筆証書遺言の押印に関する判例

自筆証書遺言への押印に関する代表的な判例には、以下のようなものがあります。

・押印した場所が問題となったもの

・印章(ハンコ)以外のものが使用されていることが問題となったもの

・押印そのものがあるかないかが問題となったもの

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

押印する場所

押印した場所によっては、その他の事情も考慮されたうえで自筆証書遺言として認められない場合があります。

・遺言書の書面そのものではなく、遺言書を封入していた封筒の綴じ目に押印されている遺言書は有効(最判平成6年6月24日)

・検認したときに既に開封されていた封筒に署名と押印がある遺言書は無効(東京高判平成18年10月25日)

押印した場所が封筒の綴じ目でも有効とされたのは、署名は書面にされていたからです。封筒に署名と押印がされている遺言書は、

・書面そのものに署名がない

・封筒と書面が一体化しているとはいえない

という点を理由に遺言書は無効であるとしています。

もし封筒と書面が一体化されていると客観的に判断できる遺言書であれば、封筒に署名と押印がされていても自筆証書遺言として有効だと認められる余地が残されているとも考えられます。

ただし、これらは例外的な事案です。よほどの事情がない限り、書面に署名と押印をする一般的な作成方法を選択しましょう。

印章以外のものが使用されている

三文判や実印など一般的に使用されている印章以外で押印された場合、自筆証書遺言として効力を有するのでしょうか。以下の判例で確認しましょう。

・印鑑ではなく指印で押印されている遺言書は有効( 最判平成元年2月16日)

・印鑑ではなく花押が書かれている遺言書は無効(最判平成28年6月3日)

指印は押印として有効ですが、花押は無効であるとされています。

花押は民法に定める押印の要件を満たさないというのが、無効の理由となっています。重要な文書は「署名と押印のセット」が必要であるという日本の慣習があるなかで、必ずしも一般に普及しているとは言えない花押について、「印章の押印=花押」とは考えることに無理があるからです。

せっかく作成した遺言書が無効にならないためにも、一般的な印章(実印である必要はありません)で押印するようにしましょう。

押印のそのものがあるかないか

押印そのものがなくても、自筆証書遺言として有効であると認められた判例もあります。

・日本国籍に帰化しているものの、手書きでサインすることが習慣になっている人が作成した、押印のない遺言書は有効(最判昭和49年12月24日)

・特段の事情もなく押印が無い遺言書は、民法第968条第1項を満たさないため無効

押印がなくても遺言書として有効と認められたのは、帰化した人による英文で書かれた遺言書が唯一の判例です。

押印がなくても遺言書として有効であると認められた理由は、以下のとおりです。

・1年9ヶ月前に日本に帰化したロシア人であること

・ロシア語と英語でのコミュニケーションを主とし、日本語は堪能ではなかったこと

・ヨーロッパの様式に準じて生活していたこと

以上の事情から「手書きのサイン=署名+押印」と認められました。

これらのような特殊な事情がない限り、押印のない自筆証書遺言は原則どおり無効と考えざるをえません。

ただし、これはあくまでも判例に基づいた一般的な見解です。

もし、自筆証書遺言の有効性に疑問があったり、お困りごとがある場合には、まずは一度遺産問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

遺言書に関する記事の一覧はこちら
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このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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