



民法上、被相続人が死亡したときは、子や親、場合によっては兄弟姉妹に対して相続権を保障しています。しかし、相続人の悪意によって相続させることができない、あるいは相続させたくない特定の相続人がいる場合、被相続人はどう行動すればいいでしょうか。
次にご紹介する5つの項目のうち、いずれかに該当した相続人は相続権を失います。
特に⑤では、遺言書そのものを偽造・変造・破棄・隠匿したことと、それによって相続について不当な利益を得ることの2つが目的・動機がなければ、相続欠格の要件は成立しないとされています。
相続欠格になると、相続権だけでなく受贈者としての資格も失います。また、当該被相続人を相続欠格者にする手続き等は必要ありません。しかし、共同相続人の相続欠格を主張して争う場合は、相続権または相続分不存在確認請求を提起する必要があります。
被相続人の廃除とは、相続欠格には該当しないものの、特定の相続人を廃除して遺産を相続させないことを目的とするシステムです。
具体的には、次に該当する人が推定相続人廃除の対象となります。
推定相続人の廃除は相続欠格とは違い、家庭裁判所での手続きが必要です。被相続人が生前に申し立てを行う方法と、被相続人が遺言書で相続人の廃除の意思表示をして遺言執行者が遅滞なく申し立てを行う2種類の方法があります。そのため、遺言で廃除の意思表示をするときは、必ず遺言執行者を指定しなければなりません。家庭裁判所が受理された申立書をもとに判断し、審判が確定すると当該被廃除者は相続権を失います。
なお、相続人の廃除は相続欠格とは異なり、取消が可能です。排除された相続人が、被相続人に対して過去の行いについて誠心誠意謝罪し、許しをもらえる可能性もあるからです。その場合は家庭裁判所に再度申請しましょう。
相続人が相続欠格もしくは廃除されたことで当該相続人は相続権を失いますが、代襲相続により、その者の子どもが相続人となります。
相続欠格と廃除、その違いについて説明させていただきました。単純に「この相続人は嫌いだから」「たくさんお金を使い込まれたから」という理由で相続権を失うことはありません。法律で保障されている相続権を失うのですから、その判断は慎重に行われるのが通常です。
共同相続人が相続欠格に該当するかどうか、あるいは推定相続人の行動は相続廃除をしなければならないほどのものであったか、線引きが難しいときは相続に詳しい弁護士にご相談ください。他にも、相続廃除でトラブルに陥っている被相続人の方や相続人の方からのご相談もお待ちしています。
このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。
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