相続人の一人が親の敷地に建物を建てている
相続人が親の敷地に建物を建てている場合、相続税や贈与税はかかるのでしょうか?
また、敷地が親名義になっている場合と借りている場合とではどのように異なるのでしょうか?
親の敷地に建物を建てている場合の相続税と贈与税について解説します。
目次
1. 敷地が親名義の場合
1-1. 相続人にかかる相続税と贈与税
親名義の敷地に相続人が建物を建てても贈与税はかかりません。敷地の使用貸借は贈与税が課税されないことになっているからです。
使用貸借とは、今回のケースに当てはめて説明すると、「相続人が無償で敷地を使用した後に返還することを約束して親の敷地に建物を建てている場合(民法第593条)ということになります。
しかし親が亡くなり相続が発生すると、使用貸借の関係が終了します(民法第599条)。そのため、親の存命中に相続人が贈与税を支払う必要はありませんが、相続人がその土地を相続すれば、土地について相続税を支払う可能性が出てきます。
1-2. 使用貸借していた土地の相続税
使用貸借していた土地に関する相続税は、貸宅地ではなく自用地としての評価額で算出される点で注意が必要です。
自用地の評価額は、貸宅地よりも高くなるのが一般的です。なぜなら、貸宅地の評価額は自用地の評価額から借地権の評価額を引いた金額になるからです。
以上のことから、親から使用貸借していた土地であっても相続税の計算においては貸宅地とは評価されず、自用地として相続税が課税されます。
税理士などへ試算を依頼することで、どれくらい相続税がかかるのかを予め把握しておくとよいでしょう。
2. 親が敷地を借りている場合
2-1. 相続人にかかる相続税と贈与税
親の敷地とはいえ、親が所有者ではなく地主から借りているということも考えられます。
敷地そのものの所有者は地主であり、親はその敷地の借地人という場合に相続人の一人が建物を建てると、相続人は親の敷地を又借り(転借)しているという状態になります。
※以下、図を挿入します。
[地主(所有者)]
↑地代や権利金を支払う
[親(借地人)]
↓無償で転借する
[相続人(転借者)]
地主に地代や権利金を支払っているのは親であり、その土地を相続人が無償で又借りすると「借地権を使用貸借」している状態となりますが、相続人に贈与税がかかることはありません。借地権の価値は0円として取り扱われるからです。
このような場合は、住所地を管轄している税務署へ「借地権の使用貸借に関する確認書」を提出する必要があります。この確認書を提出することで、相続人の借地権の貸借が使用貸借として認められることになるからです。
もしこの確認書を提出しないと借地権を転借したとして贈与税がかかることがあります。
2-2. 使用貸借していた借地権の相続税
使用貸借していた借地権の相続税は、自分で使用している借地権の評価額を適用します。
相続が開始するまでは相続人は転借人という立場でしたが、その土地の賃借権を相続すると借地人という立場に変わります。そのため、借地権の評価額は当然のことながら自分で使用している借地権として評価されることになり、貸宅地よりも評価額が高くなる点で注意が必要です。
相続人の一人が親の敷地に建物を建てて困っている場合は、相続問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
このコラムの監修者
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福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。