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遺言の内容に不服を申し立てることはできる?

人が亡くなると、遺された家族や親族は、悲しみに暮れつつも様々な手続を進めていくことになりますよね。中でも「相続」に関することは労力を必要とします。

相続は、遺言書がある場合にはその内容に沿うことが原則です。 しかし、遺言の内容に不満がある場合はどうでしょうか。例えば、自分への相続分が極端に少ないときなどです。こういったとき、遺言に記載された分配に対して異議を述べ、不服を申し立てることができます。

遺言内容に不服を申し立てるのは可能?

結論からいうと、遺言内容に不服を申し立てることは可能です。
故人の最後の意思である遺言は、もちろん最大限尊重されるべきものです。しかし、いかなる内容であっても無条件に実現されるわけではないのです。

例えば、故人の妻Aと3人息子の長男B、次男C、三男Dが法定相続人だったとしましょう。このとき、かねてから次男Bと折り合いが悪かった故人が、遺言書に「Bには一切の財産をやらない。」という記載をしたとします。しかし、法定相続人には法律上、「法定相続分」のほかに「遺留分」が認められている場合があります。

ここで、遺留分というのは、ごく簡単に説明すると「最低保証額」に似たような意味合いを持っています。

・法定相続分…民法で定められた法定相続人に対する遺産分割の割合

民法第900条(法定相続分)

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。
ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

・遺留分…法定相続分を元に、特定の法定相続人に対する「最低の取り分」を決めたもの

民法第1028条(遺留分の帰属及びその割合)

兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合に相当する額を受ける。

一 直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 被相続人の財産の二分の一

つまり、「Bには一切の財産をやらない」というような極端な記載があっても、Bには遺留分を請求する権利はあるわけです。

簡単に言うと、上記の例で遺産総額600万円としましょう。息子Bの法定相続分は6分の1です。しかし、Bは「Bには一切の財産をやらない」という遺言によって具体的相続分がゼロとされています。 ここで、Bの遺留分を計算すると… 600万円×1/2(遺留分割合)×1/6(Bの法定相続分)=50万円(遺留分=最低保証額) という具合になるわけです。 したがって、Bの相続分はゼロと遺言に書かれていても、Bは遺留分として50万円分を請求できます。

このように、法定相続分と遺留分を根拠にして、「自分が相続できる財産の最低額」が満たされていない場合は、不服を申し立てることができるわけです。

実際の不服申し立てはどうしたら良いのか

相続人は、遺留分の侵害を受けている限度で「遺留分侵害額請求」ができます。 (自分の遺留分を侵害している他の相続人に対する請求を「遺留分減殺請求」といいます。)

民法第1031条(遺贈又は贈与の減殺請求)

遺留分権者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

 ただし、請求の方法には具体的な法律の定めがありません。裁判外で請求しても良いですが、もし裁判で請求する場合は、調停前置の対象になるので訴訟の前にまずは遺留分侵害額請求調停を申し立てるのが原則です。

※具体的事情のもとで調停が成立する余地がないと判断されれば、調停を省略して訴訟という方法も認められます。

どの方法が良いかは、ケースバイケースでしょう。一般的に話し合いで決着したほうが良いというイメージを持つかもしれませんが、そうとも言い切れません。

なぜなら、人間だれしも、一度受け取った財産を手放したがらないものですし、面倒なことは無視したいという心情があります。他方で、調停や訴訟を選択した場合、法律の知識がない素人には大変な労力になりがちです。 さらに遺留分侵害額請求権の消滅時効は1年と短く、できるだけスムーズに手続きを進める必要があります。

遺言の内容に不服申し立てをしたい方は、専門家(弁護士)に相談してみましょう。

争いを起こさない遺言作りも大切

後々になって遺言の内容から争いが起きないようにするためには、相続人それぞれの遺留分に配慮した遺言作りが求められます。

今回は遺産の全てが現金であるという前提で計算しましたが、実際には不動産が含まれていたり有価証券(株式など)が含まれていたりして、もう少し複雑です。

また、長男には不動産を、次男及び三男には現金を遺したいという方も多いです。さらに、相続分に差を付けたいときは「付言事項」という但し書きのようなものを利用することもあります。

何を書いても構わない部分ではありますが、基本的にはプロのアドバイスを受けながら記載すべきでしょう。 プロのサポートを受けて争いの火種とならない遺言作りを進めていきましょう。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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