



親が高齢になり介護が必要になったとき、兄弟が介護の負担を均等にしていて兄弟間になんの不満もないケースというのは実は少ないかもしれません。
どうしても兄弟のうちの特定の人に介護の負担が偏ることが多いでしょう。
そして、このようなケースでは介護していた親が亡くなった時の相続でもめるケースが、実はとても多いのです。
以下に、なぜ、そのような問題が起こるかをみていきましょう。
例えば、相続人のうちひとりが被相続人の介護をしていたり、ときには高額の医療費を立て替えたり、日用品を継続して購入していたりしたとします。
そして、そのような介護生活が何年も続いたあと、被相続人が亡くなったとします。
被相続人が遺言書を遺していなければ、遺産は、法定相続分どおり他の兄弟と均等に分けるということが前提で話が進むでしょう。
そうしたときに、介護のために時間や金銭を費やした相続人の不満が爆発して、トラブルになることがあるのです。
介護によって相続分は増えるのでしょうか?
被相続人の財産の維持又は増加に貢献した金額のことを「寄与分」といいます。寄与分が認められれば、法定相続分が修正されます。
寄与分があるときの相続分は、
(遺産の額 − 寄与分)× 法定相続分 + 寄与分の額
で計算します。
ここで、寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人がいる場合に相続人間の公平を図るためにそれを考慮する制度です。
介護をしていた場合でも、それが、財産の維持や、増加についての特別の貢献があったと認められなくては寄与分は認められません。
介護をしていた場合で、寄与分が認められるケースとしては
ここでポイントとなるのは、①扶養義務の範囲を超えているかどうか、②被相続人の財産の増加もしくは維持に寄与したかどうかです。
次に、介護をしていなかった相続人から、相続時に不満がでることがあります。
それは、介護をしている相続人が、被相続人のキャッシュカードで銀行からお金をおろして日用品を購入していたようなケースです。
このようなケースでは、被相続人の遺産が思ったより少なかった場合にトラブルが生じることがあります。
つまり、介護をしていなかった相続人が、被相続人の死後に、こんなに預金が減っているのは、介護していた相続人が必要のないことに使ったり自分のために使ったに違いないと主張するのです。
このような場合は、介護をしていなかった相続人が、介護をしていた相続人の財産の中に遺産が混入している等と主張して相続財産の範囲を争うことになります。
具体的には、介護をしていなかった相続人が、介護をしていた相続人に対して不当利得返還請求などの請求をしていくことになります。
これに対して、介護をしていた側は、 被相続人に頼まれて引き出して被相続人のために使ったので正当な引き出しであると主張したり、被相続人から、贈与を受けたものであると反論することが考えられるでしょう。
いずれの側でもどのような証拠を出せるかが重要となります。
介護はときに、壮絶で、お金や労力がかかります。
以上のように、被相続人が介護を受けていた場合、それが身内による介護であった場合にはどちら側からも不満がでてトラブルに至ることが少なくありません。
トラブルにいたった場合はもちろんですが、被相続人の介護生活の中で今後の相続について不安がある方は弁護士に相談するといいかもしれません。
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このコラムの監修者
福田法律事務所
福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)
神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。