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「遺産分割調停の「管轄」はどう決める?申立て先の決め方や注意点とは」

遺産分割調停の申立て先は、相手方の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所です。ただし、相続人全員の合意があれば変更できます。申立人側の事情が認められた場合も変更可能です。

相続人間で遺産分割協議がまとまらなかった場合、家庭裁判所で行う「調停」にて解決を求める方法があります。しかし、家庭裁判所は全国にあるためどこの裁判所で調停を行うべきなのか、知りたい人も多いでしょう。

実は、遺産分割調停はどの家庭裁判所でも行えるものではありません。そこで、本記事では遺産分割調停の「管轄」に注目します。調停を行う裁判所の決め方や、遠方の家庭裁判所に参加できない際等の注意点についても解説しますので、ぜひご一読ください。

遺産分割調停はどこの家庭裁判所で行う? 

遺産分割を円滑に解決する方法の1つ「遺産分割調停」ですが、家庭裁判所へ申立てする場合には、一体どこの家庭裁判所で行うのでしょうか。詳しくは以下で解説します。

 相手方の住所地を「管轄」する家庭裁判所で行う

遺産分割調停を行う家庭裁判所は、遺産分割を争う相手方の住所地を「管轄」する家庭裁判所へ申立てを行い、調停をスタートすることになります

たとえば、兄弟2名で父の遺産分割を争っており、弟が兄に遺産分割調停を起こしたい場合、兄の住所地を管轄する家庭裁判所に対して遺産分割調停を申立てることになります。

相手方が複数いる場合はどうする?

遺産分割調停を複数の相続人に対して申立てしたい場合は、どのように申立先の家庭裁判所を決めるのでしょうか。

結論から言うと複数の相続人のうち、どの相続人の管轄地でもOKです。申立人側の都合でも、相手方の相続人が通いやすい家庭裁判所でも、どのように選んでも問題ありません。

なお、家庭裁判所の管轄地については以下から確認できます。

参考URL 裁判所 裁判所の管轄区域 

 申立ての裁判所を相続人の都合で変更できる?

遺産分割調停の申立て先の家庭裁判所は、相続人の都合で変更できるでしょうか。遺産分割調停に参加する相続人(当事者)全員の合意があれば、変更は可能です。

たとえば、相続人が東京以外の関東近郊に集中している場合、東京での調停が一番通いやすいという可能性があるでしょう。この場合、相続人全員が同意すれば管轄地ではない東京で調停が可能です。

この方法は「合意管轄」と言います。管轄地以外の場所へ全員合意したことの証明に「管轄合意書」を裁判所へ提出する必要があります。

(※)全員の合意が得られない場合には、変更はできません。

管轄合意書は以下をご確認ください。

参考URL 裁判所 管轄合意書PDF

病気や子育て等を理由に管轄地は変えられる?

遺産分割調停を申立てする側の人が、病気や子育てなどを理由に、申立人側の住所を管轄する家庭裁判所へ申立てできるのでしょうか。こちらは、裁判所が個人的な事情があると認めた場合には、認められる可能性があります。家事事件手続法第9条で定めているためです。

たとえば、子育て中でも幼いお子様を預けられる環境ではない、など管轄地の変更がやむを得ないと認められれば、変更が可能です。この方法は「自庁処理」と言います。

ただし、自庁処理を認める前に、家庭裁判所側が調停の相手方となる相続人に意見を確認しているため、認められないおそれもあります。

調停に参加できない!管轄裁判所に行けない場合の注意点

遺産分割調停は基本的に「相手方」となる相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てますが、もしもやむを得ない事情で調停に参加できない場合はどうすればよいでしょうか。

この章では参加できない場合の注意点や、対策をご紹介します。

欠席をすると解決が長期化するおそれがある

遺産分割調停が行われる日を「期日」と言いますが、欠席は可能です。しかし、期日は家庭裁判所側が一方的に決めるとは限りません。特に当事者が多い場合は、あらかじめ書記官を通して調整が行われることが多いでしょう。欠席してしまうと、話し合いの機会を失ってしまうため、出頭できるように調整しましょう。なお、欠席にペナルティはなく、無理な内容で調停が勝手に成立することはありません。

一般的に遺産分割調停は12年を要するとされます。令和5年度司法統計の「第45表 遺産分割事件数終局区分別審理期間及び実施期日 回数別全家庭裁判所」を参考にすると、遺産分割調停の期間で最も多かった期間は1年以内、次に2年以内となっています。

調停に出席・欠席を繰り返し話し合いがまとまらないと、調停が長期化することがあります。さらに欠席を続けてしまうと、調停不成立となり審判へ移行します。審判まで発展すると家庭裁判所の審判官が、調停とは異なり欠席者がいた場合でも判断を下すため、ご自身にとって不利な内容の遺産分割結果となるおそれがあります。特に特別受益や寄与分の主張がある場合、調停内で主張していくことがおすすめです。

調停は平日の日中帯しか行われませんが、突然数日後に無理な出席を求められるわけではなく、調停委員の都合や調停室の空き状況にもよるため12ヶ月程度の余裕をもって調整が行われます。弁護士に依頼している場合は、弁護士へ期日の確認が行われます。

参考URL  裁判所 和5年 司法統計 年報3 家事編 第45 遺産分割事件数―終局区分別審理期間及び実施期日 回数別―全家庭裁判所 p.63.

 遺産分割調停が長引くことでどのような問題がある?

先に触れたように、遺産分割調停は1年~2年程度かかる傾向があります。遺産分割協議・調停・審判の一連の手続きについて法的期限はありません。

長期間にわたって協議を行うことも問題ありませんが、遺産分割調停が長引くことは、以下のとおり相続人側にデメリットもあります

   相続税申告

相続税の申告期限は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。遺産分割調停が長引くと、この期限内に遺産分割が確定せず、相続税の申告・納税が遅れてしまう可能性があります。また、遺産分割協議の内容を確定できないまま法定相続分として相続税申告を行う場合、配偶者控除や小規模宅地等の特例が受けられません。(※)

(※)「申告期限後3年以内の分割見込書」を期限内に提出すれば申告後3年以内なら控除・特例が受けられます。

    不動産の管理・処分が困難になる

被相続人の遺産の中に不動産がある場合、遺産分割がまとまらないと不動産の名義変更ができません。名義変更ができないと、不動産の売却や活用が制限されるため、売り時を逃すおそれがあります。また、空き家がある場合は遺産分割がまとまらないと、相続人全員が管理責任を負っている状態になります。

    相続人のストレス増加

遺産分割協議が長引くと、相続人同士の関係が悪化しストレスが増加する可能性もあります。家族の間で遺産をめぐって対立するため、長引くことで相続人以外の親族とも関係が悪化することが少なくありません。

さらに、相続人が高齢の場合は遺産分割調停中に認知症が進行したり、亡くなったりする可能性もあります。その場合、遺産分割協議がさらに複雑化する可能性があります。

どうしても出頭できない場合は早期に連絡をすること

指定された調停の期日にどうしても出頭できない場合は、まず調停が行われる家庭裁判所へ連絡しましょう。期日の延期や変更が認められる可能性があります。ただし、直前の変更は難しく、欠席者がいても当日出頭している当事者のみで調停は行われます。

遠方等の理由で参加できない場合の対策方法とは

調停に住まいが家庭裁判所から遠方にある、体調不良等、様々な理由でどうしても参加が難しい場合には、以下2つの対策方法が考えられます。

   電話会議・テレビ会議システムを用いた参加

   弁護士を代理人とし出席してもらう

電話会議システムやテレビ会議システムの場合、家庭裁判所が遠方の相続人が体調不良等を理由に認めるもので、調停当日に音声を用いて参加できる方法です。現在テレビ会議が可能な裁判所がほとんどですので、遠方の場合はこの方法で参加する旨をあらかじめ家庭裁判所側へ伝えましょう。

また、弁護士に遺産分割調停について委任することで、調停に代理人として出席してもらう方法もあります。テレビ電話会議にアクセスできる環境がない場合、法律事務所からつなぐことも可能です。

弁護士が調停の現地へ参加する際には、日当や交通費等の実費が発生しますので費用を確認の上で依頼されることがおすすめです。

遺産分割調停に呼ばれたが、関わりたくない場合は?

遺産分割調停に呼ばれたものの、以下のような理由で出頭をしたくないケースも考えられます。

・遺産(相続財産)は受け取るつもりがない

・相手方(申立人側)の主張に沿う意向である など

 このようなケースでは、欠席をしても問題はありませんが「調停条項案に合意する旨の書面(受諾書面)」を提出しておくことがおすすめです。欠席中に調停が成立しても合意します、という書面です。

また、相続放棄を検討している場合は、ご自身で必要書類を用意し、手続きを進める必要があります。相続放棄は被相続人の遺産について、債務も含めた一切を放棄するものです。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申述します。

ただし、相続放棄は「自己のための相続の開始があったことを知った日から3か月以内」に行う必要があるためご注意ください。

参考URL 裁判所 相続の放棄の申述

遺産分割調停で知っておきたい注意点

これから遺産分割調停を始めるにあたっては、押さえてきたい注意点があります。この章ではよくある注意点について簡潔にご説明いたします。

 被相続人の債務を誰が負担するのか調停で決められる?

遺産分割調停は誰がどのように遺産を相続するのか、話し合いにて解決を図るものです。では、被相続人に債務があった場合、調停内で誰が返済義務を負うのか決めることはできるのでしょうか。

調停内で債務を返済する人や、それぞれの負担額を決めることはできますが、あくまでも相続人間の合意となるため債権者はその後も各相続人に対して返済を請求できます。注意が必要です。債務を放棄したい場合は、プラスの財産も含めた相続放棄を検討する必要があります。

遺言書がある場合はどうする?

遺言書がある場合は、遺産分割協議や調停ではなく遺言書の内容に沿って遺産分割を行う必要があります。もしも遺言内容に作成に問題があったり、遺留分の侵害があった場合等は、以下の方法で異議を申立てできます。

・遺言無効確認訴訟

・遺留分侵害額の請求調停

このように、遺産分割調停とは違った方法で解決を求めることが可能です。

相続人の中に行方不明者がいたらどうすればいい?

複数の相続人の中に、遺産分割の連絡を行っても返事がなく、居住地もわからないような「行方不明者」がいる場合は、遺産分割調停をどのように進められるでしょうか。

まずは、家庭裁判所に対して不在者財産管理人の選任の申立てを行います。選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得れば行方不明者の代わりに遺産分割調停に参加できます。

遺産分割調停は弁護士に相談しよう

遺産分割調停を申立てしたい、あるいは別の相続人から申立てを受けた場合には、弁護士へ相談することがおすすめです。弁護士に相談する主なメリットは以下です。

遺産分割調停を弁護士へ依頼するメリット

弁護士に依頼すると、調停に必要な書類や証拠などの作成や整理を弁護士が行います。また、遺産の評価、特別受益や寄与分の主張、専門的な判断が必要な場面で的確なサポートを受けられるため、弁護士がいないご状態よりも不利になりにくくなります。

他の相続人や調停委員への主張を、代理人として行うことで、精神的な負担を軽減し、冷静に話し合いを進めることができる点も大きなメリットでしょう。

まとめ

本記事では遺産分割調停の「管轄」の視点から、申立て先の決め方や調停における注意点を中心に詳しく解説しました。遺産分割調停は原則として相手方の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てを行いますが、相続人全員の合意があれば変更が可能です。遠方等の事情があり現地へ参加できない場合は、電話会議システム等の対策方法があります。

遺産分割調停は話し合いに納得できない場合は不成立にできますが、話し合いが長期化すると相続人にはデメリットもあります。円滑な解決を目指すためにも、まずは弁護士へご相談ください。

このコラムの監修者

  • 福田大祐弁護士
  • 福田法律事務所

    福田 大祐弁護士(兵庫県弁護士会)

    神戸市市出身。福田法律事務所の代表弁護士を務める。トラブルを抱える依頼者に寄り添い、その精神的負担を軽減することを究極の目的としている。

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